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ぼくとも。 |

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Posted by 春乃 綺 on  | 

あなた限定のわたし(ギャリ+イヴ)


※ハマった勢いでIb小説を執筆。
以下、限りなくギャリイヴに近いギャリー+イヴです。




『イヴはいい子ね』
 言われるたびに誇らしかったその言葉は、いつしか少女に重い枷をはめていった。
 その枷を取り払ったのは―――。


◇◆◇

「それじゃ、イヴ。パパとママ、夜あなたが寝る前までには帰ってくるから、お留守番お願いね」
「うん、いってらっしゃい」
イヴはそう言って、笑顔で手を振り、両親を玄関先で見送った。

今日は父方の遠い親戚の法事があるとかで、イヴの両親は以前から隣町のお屋敷まで行くことになっていた。イヴはまだ小さいから邪魔になるという理由で、ひとりこの屋敷に残ることになり。
イヴをひとり家に残すことを心配した両親から、だれか大人の人に自分らの留守を頼もうかという話も出たが、もう10歳になるのだから大丈夫だとイヴは両親に笑ってみせた。その留守を頼む大人の候補にギャリーの名前もあったから、イヴは彼に迷惑をかけないよう、余計ひとりで大丈夫なように振る舞ったというのもある。
両親は自分たちの他にイヴが一番懐いているのがギャリーだと分かっているから、彼に留守を頼む気でいたのだろう。そしてイヴはそれを見抜き、ギャリーが最近、仕事が軌道に乗り、忙しいことを幼いなりに分かっていたから、なるべく彼に話が行く前に終わらせたかった。
だってギャリーはイヴにどうしようもなく甘いから、きっと仕事を投げ出してもイヴのところに来るだろうことが分かっていたから。ギャリーとはそういう人なのだ、とイヴが理解したのは付き合いのまだ早い段階のころだ。

さてと、と玄関の鍵を閉め、イヴは2階の自室へと向かう。土曜の今日は午前中のうちに学校の宿題を終わらせて、午後はキャンバスに絵を描こうと思っていたのだ。
先日、ギャリーと一緒にメアリーの絵を大きなキャンバスに描き、その絵をイヴが貰い受けた。
現実世界のメアリーの絵画が果たして燃えてしまったのか、そもそも存在しないのかは、依然として分からないままだ。けれど、ずっと燃えてしまったままなのは可哀そうだからと自分たちで彼女を描くことを決めたのはこちらに戻って来て間もない頃だ。
その絵が完成したのが先日のことで、イブは絵画の中で微笑むメアリーのために自分、ギャリー、ウサギなど様々なものを描いては、彼女の横に並べた。―――あの世界で友達が欲しいと言い続けていたあの子が寂しくないように。
今日は何を描こうかな、と考えながら、イヴは物音一つしないリビングを通り抜ける。いつもなら、父がソファに座って、新聞を眺めているそこには、時計の音だけが大きく響いていた。やけに耳障りなその音に心臓の鼓動が少し速さを増した。
(ひとりの家って、こんなに不気味なんだ……)
怖さを殺すために服の胸元をギュッと握りしめる。そういえば、ひとりでこの家で過ごすのは今回が初めてだ、とイヴは今更ながら気付いた。それと同時に心臓は早鐘のように鳴りだす。ふと、リビングと戸続きになっているキッチンから、時折ぴちゃん…ぴちゃんという水が落ちる音がした。
途端、背筋がぞわぞわと粟立つ。イヴはこの感覚に覚えがあった。それは、あの奇妙な美術館に初めひとりで投げ出された時と同じ感覚だった。
でもあの時は途中からひとりではなかったから。彼が、いてくれたから。

(ギャリー……)

彼の名前を声に出して呼びそうになって、慌ててイヴは首を激しく横に振った。
だめだ。忙しい彼を呼ぶわけには。
唇を噛み締め、震えだしそうな足を強引に前に進める。
おかしいな、もう薔薇もないし、自分を傷つける芸術品(モノ)もここにはないのに。誰も居ないことがこんなにも怖いなんて。
転ぶように階段を駆け上がり、イヴは自室へと飛び込み、扉をきつく閉めた。
扉に身体を預けたまま、ずるずるとしゃがみ込み、イヴは小刻みに揺れる両手で自身を守るように抱きしめた。

「……ギャリー…」

こんなときに一番に助けを求めるのは両親ではなく、あの場所で命懸けでイヴを守ってくれた彼の名前で。優しくて頼れる彼はいつだってイヴのヒーローだった。
恐怖で震える自分を優しく抱きしめてくれ、「大丈夫、アタシがいるじゃない」と―――。
そこまで考えたら駄目だった。やがてイヴは膝に顔を埋めて、込み上げてくる恐怖から啜り泣きをはじめていた。

(怖いよぅ…ギャリー……)

どうか、孤独(ここ)から私を救って。



◇◆◇

はぁ。
…はぁ。
……はぁあ。

ギャリーはもう数えるのも面倒なくらい溜め息を吐きながら、シャーペンのノックを頻りにカチカチと鳴らしていた。そして、「うぅぅうー」という呻き声と共に、ちらっと見やるは自身の携帯電話。
今日は仕事初めからこの調子で、それにいい加減耐えられなくなったのは一緒に仕事をしているスタッフだった。
というのもギャリーの勤めるこの小さな服飾事務所はギャリーが大学卒業と共に大学仲間らと設立し、彼をメインデザイナーに頂く形で成り立っている。ギャリーは大学卒業までにいくつかの新人賞をとり、期待の新人として現在世間で注目を浴びている。
ちなみに彼のデザインする服はいずれも上層階級の清楚な少女から女性をターゲットにしたものなのだが、まぁ、今回それは割愛するとして。
つまりどういうことかというと、彼の仕事(デザイン)が出来なければ、他のスタッフも仕事にならないということだ。
数時間前からまっ白なスケッチブックの前で気も漫ろなギャリーの横で、滑らかな赤い生地に鋏を入れていた女性―クレアは眉間に皺を寄せて、彼を睨んだ。

「ギャリー、いい加減にして。全然、仕事になってないじゃない。クライアントの締切、来週末までなんでしょ」
「分かってるわ、……分かってるんだけど…」
「なに、またスランプなの?」
「そうじゃないんだけどぉ……」

そう言葉を濁しては、またちらりと傍らの携帯電話に目をやる。ピクリとクレアの眉が動いた。

「ギャリー……」
「あー…ごめんなさい…ただ、どうしてもねぇ……」

しおしおと謝るくせに一向に仕事の手は進まないギャリーを呆れ眼で見下ろし、クレアは今日はこの人使い物にならないわねと肩を下げた。
ここまで携帯電話を気にするってことは、どうせギャリーが猫可愛がりしているという件の少女がらみなのだろう。
そう思ったのはクレアだけではなかったようで、向かいで型紙を作っている男性スタッフ兼ギャリーの悪友のマットが「なんだよ、ギャリー」とニヤニヤした意地悪い笑みを浮かべ。

「お前、とうとう手ぇ出したのか?」
「アンタ馬鹿じゃないの!?イヴ、いくつだと思ってんのよ!?」
「年端もいかないってことしか知らねぇよ。お前、俺らに会わせねぇし。まぁ、いざって時は警察に知り合いがいるから任せろ」
「ホント馬鹿じゃないの!?警察に世話になる用なんてないわよ、アタシ!」
「数年後は分かんねぇだろ。魔が差したってこともあり得るしな」
「魔が差して手ぇ出すって、それアタシ最悪じゃない!」
「幼女に惹かれつつあるロリコンなのに、いまさらお前何言ってんの」
「まだ惹かれてないわよ!」

ぎゃんぎゃんとやり合う二人に、クレアはただでさえ仕事進まなくて頭痛いのにと、頭痛がする頭をおさえた。
わざわざ休日出勤しに来てるのに、こう仕事が進まないんじゃ、いっそ潔く帰った方がいい気がしてくる。っていうか、私は帰りたい、とクレアは内心で呟いた。


「で?」
「え?」
「今日の仕事の絶不調の理由は?その子が原因なんでしょ?」

ともかく、と未だマットと下らない応酬を続けているギャリーにクレアは尋ねた。これでギャリーが仕事するなり、…最悪帰るなりを選択することを願って。
急に水を向けられたギャリーはえぇと、と言い淀んだ後、もごもごと詳細を喋り出した。

「イヴがね、今日ひとりでお留守番してるんですって。それで、イヴのママさんに何かあったらよろしくって頼まれたのよ…」
「へぇ。それで、電話がかかってこないか、ちらちら携帯見てたのね」
「そう!そうなのよ!イヴがひとりで泣いてそうで、もうアタシ気が気じゃなくって……」
「そう。それは心配ね。だったら、こんなとこでぐだぐだ悩んでないで、とっとと仕事終わらすか、納品諦めるかしなさいよ」
「ちょっ!?それ、選択肢あるようで、ないようなものじゃ…!?」
「な・ん・の・た・め・に・みんなで連日休日出勤してると思ってるのかしらぁ?オーナーァ?」
「はい、すみませんでした」

後ろに般若を背負ったクレアに土下座する勢いでギャリーは謝罪。ぺこぺこと頭を下げ、顔を青ざめながら思ったのは、いつかの『女って怖いわぁ…』という言葉だった。



◇◆◇

とても宿題する気にも、絵を描く気にもなれなくて、イヴはベッドに寝転んだ。頭まですっぽりもぐりこみ、身体を小さく丸める。
ベッドの頭上には、10歳の誕生日にギャリーに貰った赤薔薇を抱えたウサギのぬいぐるみが置いてあり、イヴはそのぬいぐるみを胸にしっかりと抱き込む。
時計は相変わらずカチカチと規則正しい音で時を刻んでいるようだけれど、時間は停滞でもしているかのようになかなか流れていかない。
いつもはあっという間に過ぎる5分が今は一時間にも二時間にも感じられた。

(早く、早く夜にならないかな…)

たしか、両親はイヴが寝る前までには帰ってくると言っていた。裏を返せば、少なくとも日が明るいうちには帰ってこないということだ。
夜まであと何時間あるだろう、とイヴは気が遠くなる思いがした。
寝てしまえば、夜かな。そんなことを考えたけれど、眠気は一向に襲ってこない。
一分が60秒で一時間が3600秒で半日が……一体何秒数えたら、ひとりじゃなくなるの。
ぽろぽろと目から溢れだす涙が顔を伝ってシーツに沁みを作る。
ここに電話がなくてよかった。あったら、きっと心細さから、ギャリーに電話していた。
だめなのに、忙しいから迷惑かけちゃ、手のかからない良い子でいなくちゃいけないのに。

『かわいい!いい子ね、イヴ、大好きよ!』

耳の奥でギャリーの声がする。いつもだったら、一緒に抱き締めてくれるのに、今はその温かい腕はない。

「ギャリー…」

寒々しさにイヴの心は弱っていった。




◇◆◇

「よし、最後の一枚、完成よ!」

そう言うや否や、ギャリーは掛けていた椅子から慌ただしく立ちあがり、身支度を始める。
デザイン画を突き出されるようにして渡されたマットは眉を上げて、「おいおい、やっつけ仕事じゃないだろうな?」とバタバタと動き回るギャリーに訊いた。その言葉に対してのギャリーの反応は「はぁ!?」と肩を怒らすというもので。

「当たり前じゃない!これでもプライドくらいあるわよ。いつも完成品はその時の全力で挑んでる」
「―だな。悪い、軽率だった」
「それで、ギャリー。あの子のところに行くのよね?」

マットの横からデザイン画を見ていたクレアはもう戸口まで行って、今まさに出ようとしていたギャリーを一旦その場に引き留めた。ギャリーは振り向きざまに早口で用件だけ伝えた。

「ええ、悪いけど、問題が起きたら、携帯に電話してくれるかしら。あと、帰る時も連絡頂戴。連絡がなかったら、夜にまた来るわ」
「了解。んじゃ、ギャリーは気になって仕方なかったあの子のところにいってらっしゃい。夕飯は適当に食べるから、ギャリーも適当に食べてね」

クレアの言を噛み砕く間、ギャリーはパチパチと目を瞬き、それから意味を悟ってふっと微笑んだ。つまり、クレアは夕飯が終わるまで、イヴと一緒に過ごせと言っているのだ。なんとも小粋な心遣いだとギャリーは思わず笑ってしまった。

「ありがと。クレアもマットに奢ってもらうといいわ」
「あら、嬉しい。いいの?マット」
「ちょ、待て、お前の奢りじゃないのかよ」
「彼女の飯代くらい、彼氏が持ちなさいよ。情けないわね」

なんだか渋い顔をするマットを尻目に、ギャリーはじゃあねと職場を後にした。


ギャリーは車の行き交う大通りを足早に歩いていた。時刻は三時を回ったところだ。もう少し、早く片付くかと思ったけれど、思いの外時間がかかってしまった。
ギャリーの事務所からイヴの家まで徒歩で30分あまり。イヴたち家族は閑静な高級住宅街の一角に家を構えていて、そこは街の中心地からやや外れたとこに位置する。
なだらかな坂が数十分続く彼女の家まで行くのは、結構骨が折れたりするのだけど、イヴが待ってるとなれば、疲れなんてなんのその、である。
特に今日はイヴの両親が不在ということもあって、いつもより歩くスピードが速い。――まぁ、ママさんのあんな言葉聞けば、速くもなるけどね、とギャリーはやおら息を吐いた。

『明後日ねぇ、私たちが親戚の法事に行っている間、イヴのことお願いできないかしら?ギャリーさんもお忙しいと思うんだけど、あの子をひとりで家に残して行くのはちょっと心配で…。しっかりしている子だけど、脆いところもあるから…。
えぇ、えぇ、そうなのよね、甘えるの下手な子だし、なんだかひとりでお留守番って話をした時、あの子ちょっと泣きそうになっていたというか…。ギャリーさんに来ていただきましょうか?って訊いても、いいの、大丈夫の一点張りで。
お仕事が終わった後でもいいのよ、ちょっと覗いてくれるだけで。えぇ、あの子が一番懐いてるのってギャリーさんだから、ギャリーさんに会えば安心できると思うし…。えぇ、えぇ。お願いできます?あぁ、そうですか。有難うござます。それじゃ、明後日お願いしますね』

一昨日の夜、イヴの母からかかってきた電話。あれから、ずっと気掛かりだった。
イヴは人一倍、芯の強い子だけど、その分、甘え下手なところがある。いつか長い我慢の末にポッキリいってしまいそうで、ギャリーは気が気ではなかった。
自分には時々、甘えるような仕草をしてくれるけど、それも近くにいる時限定で、離れているとき――例えば今みたいな状況で、甘えられたことは皆無だった。
たとえ、心細くても、泣きそうでも、あの子は近くに誰かいないとひとりで我慢してしまう。
だから、なんとなくだけど、

「……泣いてるような気がするのよねー…」

ギャリーは乾いた笑いを漏らした。
恐らく自身の推測は70%くらいの確率で当たっていると思う。泣いてなくても、少なくとも心細くは思っているだろう。
イヴも自分もひとりでいることに未だ慣れないのだ。あの美術館での出来事の後遺症とでもいうのだろうか。
全く厄介なものばかり置いて行ってくれたわ、とギャリーは悪態をついた。


やがて、庭園が見事なお屋敷が目の前に現れる。ここに来る途中で買ったマカロンを右手に、ギャリーはやけにひっそりとしたその家の様子に目を顰めた。
イヴがいるはずなのに、まるで留守の家のように静まり返っているのだ。
辿り着いた呼び鈴の前で首を傾げながら、ベルを押す。家の中にベルが響き渡っているのが、外に居ても聞こえるのに、相変わらず家の中は閑散としたままだった。

「あれ、イヴ、いるはずよね…?」

怪訝な顔で玄関にある小窓を覗く。昼間だというのに家の中の廊下が薄暗いことにギャリーは嫌な予感が胸に広がった。
もう一度、ベルを押し、今度は「イヴー、いないのー?」と中に向けて呼び掛けてみる。も、結果は先程と同じ。
本格的に何かあったことを懸念しはじめたギャリーはコートの中から鈴付きの鍵を取り出した。実は前日にママさんに念のためと合鍵を預かって来ていたのだ。
合鍵を他人に渡すなんてと受け取りを拒否したが、ママさんの押しに負けてしまったけれど、預かっていて良かったかもしれないとギャリーはイヴの母に内心で2度目のお礼を言った。ちなみに1度目は鍵を預かる時に既に言っている。
ドアの中ほどにある鍵穴に鍵を指し、右に捻る。ガチャリ、と鍵は無事に開いた。
そうしてギャリーは鍵をまたコートのポケットに仕舞い、恐る恐るといった体で家の中に身体を滑らせた。

「……おじゃましまーす」

いつもより小さいその来訪を告げる声は生憎イヴの元までは届かなかったけれど。



◇◆◇

ベッドの中で時計を見ながらひたすら秒を数えていたイヴは、呼び鈴のベルの鳴る音にビクリと身体を震わせた。

(誰か…来た……?)

怖々と布団から顔を出し、自室のドアを振り返った。その時、もう一度ベルが鳴り、何事かくぐもった声が聞こえてきた。何を言っているかとか、誰の声だとかは分からなかったけれど、両親でないのは分かっていた。
まだ三時半を10分ほど過ぎたころで、両親の帰ってくる時刻には早過ぎたから。なにより、両親だったら呼び鈴なんて鳴らさない。

(郵便屋さん……?)

他に来ると行ったら、郵便配達の人しか思い浮かばなかった。だったら、出て行って荷物を受け取らなくちゃと思い、布団から出ようとした。今は見知らぬ誰かでもいいから、人の顔を見たかった。
しかし、布団から出る直前、ガチャリと玄関のドアを開け閉めする音がして、イヴは一瞬固まった。玄関は鍵を閉めたから、郵便配達の人は開けられないはず。なのに、なんで玄関のドアが開くの。
まっ白な頭でイヴは茫然としていたが、ぎしっという階段を上がる音がして、一気に血の気が引いた。
ガタガタと震える身体をベッドの中に隠して、イヴは息をひそめて、存在を消すよう努めた。
ウサギのぬいぐるみを胸の―心臓の上に抱えて、顔を壁の方に逸らした。ドク、ドクと脈打つ心臓がうるさかった。
刃物とか持ってたらどうしよう。私今薔薇ないから一回しかダメージ受けれない。ふっと漏れそうになる泣き声を唇を噛み締めることで殺した。
階段を上る音が近づいてくる。そして、その足音はイヴの部屋の前で止まった――。

(怖い。怖いよ。助けて、誰か…。)
(ギャリー!!)

コンコンというノック音でヒクリと竦み上がる自身の心臓。呼吸が止まった。けれどその直後、ドア越しに聞こえてきた声にイヴの心の箍はそれまでとは別の方向に外れる。

「イヴ?いないの?――あら、寝てる?」
「――――!!」

イヴはベッドから跳ね起きて、無我夢中でドアまで駆けた。今までの寂しさと直前の恐怖でイヴの顔は酷いことになっているだろうけれど、構わなかった。
彼だ。彼が来てくれた!
こじ開けるようにして開いたドアの先には、イヴが焦がれて焦がれて仕方なかったギャリーがいた。
いきなり勢いよく開いた目の前のドアにビクついた様子のギャリーの腰に抱きついて、イヴはわんわん泣いた。
泣いている途中、ギャリーがイヴを抱きしめながら、「どうしたの!?なんでそんなに泣いてるの!?」と目を白黒させていたが、イヴはただ泣きながらやっと得た温かい存在を離さないようにしっかりとしがみ付いたのだった。


◇◆◇

それからが大変だった。自室の前で大泣きしているイヴを抱え、「大丈夫だから」とギャリーは繰り返し、イヴの目尻にキスを贈った。
そうして泣きわめくイヴを何とか宥めることに成功したギャリーは台所でコーヒーとココアを作り、1階のリビングのテーブルに置き。家の中が怖いというイヴのためにリビングから目に着く照明を全て点け、少し季節的に早いが暖房も入れた。
それらのことをしている間もイヴはギャリーのコートの裾を掴み、ひよこのように彼の後ろをついて回った。
その後、ようやくリビングのソファに腰を落ち着かせたギャリーはしゃくりあげるイヴを膝に抱いて、暫くそのままでいた。ゆるゆると背中を撫でたり、戯れに頬をさすったり、目尻の涙の跡を拭ったりとギャリーがイヴに触れるたびに、イヴの呼吸は落ち着いていった。
イヴはというと、ギャリーの胸に身体を預け、丁度心臓の真上辺りに耳を押し付けていて。自分より幾分かゆっくりしたギャリーの鼓動にうっとりと目を細めた。

「落ち着いたかしら?」

やがてすんすんと鼻を鳴らすイヴにギャリーが尋ねる。イヴはこっくりと頷いた。するとギャリーがほっとしたように笑う。

「そう。よかった…。あんなに泣いてるイヴ、見たことなかったからびっくりしちゃったわ」
「ごめんなさい…」
「いいのよ。びっくりさせちゃったのよね?」

そう言ってイヴの頭を撫でるギャリーの声はいつもより僅かに低い。イヴは心地いいふわふわした気持ちですりすりと頭をギャリーの胸にすりつけた。
ギャリーの「イヴ、くすぐったいわ」という声を聞いても、気持ちよさに止めることが出来ない。まるで猫になったようだ。なんだか喉も鳴りそうなくらいに気持ちがいい。
イヴはぴとっとギャリーに張り付いて、ふと彼の名前を甘えたな声で呼んだ。

「ギャリー…」
「―なぁに?」
「…ギャリィー…」
「ふふふ、イヴったら今日はやけに甘えたさんね」

柔らかい声音で微笑んだギャリーはイヴの額に口づけ、「可愛い」と恍惚とした声で呟いた。
どうやらこんなに甘えてもギャリーに咎められないことを知ったイヴはさらに普段誰にも言わないような我儘を彼に告げた。

「今日、一緒に寝てほしいな……」

お願い、とでもいうようにイヴは上目づかいにギャリーを見つめる。それに一瞬瞠目したギャリーはすぐにやんわり微笑んで、イヴの頬を両手で包みこんだ。
包んだ頬はふっくらと柔く薔薇色に色づき、見上げるガーネットの瞳は水分を含んで潤んでいる。ゆらゆらと揺れる瞳が口ほどに物を言っていた。

曰く、ダメ?ダメなの?―――と。

(これを断れるやつがいたら、見てみたいわ…)

内心、苦笑いをしながら、ギャリーはイヴの額に自身の額をあわせ、その瞳を覗き込みながら、ふんわりと笑んだ。


「そうねぇ…ママさんに相談してみましょうか。今日、お泊りしてもいいですか?って」






END
(続かないよ)







Ibにハマった勢いのまま、書き散らしました。後悔はない<ドヤァ…
普通にチューとかギャリーさんしてますが、それでも私はギャリー+イヴと言い張る。
一応、彼に下心はないです。純粋に愛しい子(あくまで娘じゃなく、子供)を慰めてるだけなのです。
ぶっちゃけ、私の中のギャリイヴ観では、イヴが幼い時の方がベタベタしてます(笑)

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