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ぼくとも。 |

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Posted by 春乃 綺 on  | 

Good-bye My Honey....(太空)

誰も傷付けずに生きられれば良かった。

誰も傷付かない愛があれば良かった。





Good-bye My Honey....





燦々とした日の光がカーテンから漏れ入る。
それはチクリとした痛みを伴い、俺の目に飛び込んでくる。

「…ん」
そうすると比例して、俺の意識はだんだんと覚醒を始める。
しかし、それとは裏腹に目覚めたくないという本能の方が今は勝っていたようで、眩しさから逃れるように布団に深くもぐり込んだ。

まだ寝ててもいいだろう、休日だし。

布団に身を埋める。
あぁ、幸せってこういうことをいうのかな。
再び意識がまどろみ始める。

と、
「太一~そろそろ起きなさーい」
下の階から母さんの叫ぶ声がして、意識はまた急上昇せざるを得なくなった。
仕方無く、布団の中から腕だけを伸ばして、頭上にあるはずの目覚まし時計を取った。
いつもはこれが、けたたましく鳴って、俺に起きろと急き立てるけれど、今日は休日なので、セットしてない。
つまり鳴ることはない……のだが、変わりに母さんに起こされたようだ。
眠さから再び閉じそうな目を根性でこじ開け、時計の表示を垣間見た。

8:30過ぎ。―――これはまだ、なのか、もう、なのか。

いつもより遅いが、昨日(・・)の疲れを考えると、もう少し寝ていてもバチは当たらない気がする。
うん、当たらないよな、絶対。
そう結論付けて、俺は魅惑の布団の海に再び溺れた。あぁ、幸せだ。
徐々にまどろむ意識。もう少しで暗転しそうになったところで、階下から母さんの怒号。

「たぁいちぃいいい!!早くご飯食べなさぁい!!」
「………」

それは母さんの仏の顔が崩れる最後通達に等しかった。思わず、はぁと溜息をつき、ようやくそこで俺は起き出したのだった。





気だるげに階段を降りていくと、丁度母さんは玄関から出ていくところだった。
珍しく綺麗に着飾った彼女の背中に向け、何気なしに問いかける。

「母さん、どっか行くの?」
「…あれっ? 言ってなかったかしら。今日は太刀川さん、武之内さんとお食事に行くのよ。というわけで帰りは遅くなるから、ヒカリにもそう言っといてね~」
パンプスに足をとおした彼女はルンルンだった。年甲斐もなく、と思ったのは母さんには永遠に秘密だ。
「で、そういうヒカリは?」
「部活ですって」
「ふぅん…」
じゃ行ってくるわね、ご飯ちゃんと食べるのよーと母さんは揚々と出掛けていった。
玄関でそれを見送ってから、とりあえず俺は用意されてるであろう朝食を食べに台所へと向かう。
テーブルの上にはトーストに目玉焼き,サラダ,麦茶と、明らかに手抜きしたことが分かる料理が並んでいた。
それに半分呆れながら、椅子に掛ける。




半焦げの目玉焼きを口に運びながら、俺はらしくもな落ち込みきった溜め息を吐いた。

さっき武之内と聞いて、胸がズキリと痛んだ。




昨日の出来事が頭にこびり付いて離れない。
それは空の一言から始まった。
『ねぇ、太一。私の最後の願い、叶えてくれない…?』
めったに見ない彼女の嬌笑に圧倒された。
それで、つい放心状態で頷いてしまった自分が今でも憎い。

彼女は嬉しそうに笑って、ただ一言『抱いて』と言ったのだ。





カチャカチャと大袈裟に食器の音を立てて、沈んだ気持ちで食事を続ける。
でも、あまり食べた気がしなかった。
舌が麻痺したみたいに何の味もしない
だんだん物を口に運ぶのも億劫になってきた。

でも手を止めることをしないのは、食器の陶器と鉄が当たる音で、頭の中を廻る、昨夜のノイズ(音や声)を遮る為だった。




頷いてしまったら、従わざるを得ない。

それは誰とでも寝ると決めたときに最初に定めた俺のポリシーだった。
そしてそれは相手が空(・・・・)でも、当たり前のように当てはまるのだ。
俺と空は近場のラブホテルに向かった。
正直、ラブホテルまで来て、彼女が怖じ気づいてくれることを頭のどこかで期待していた。
でも彼女はひどく緊張はしていたが、止めたいとは言わなかった。
それどころか『きて…』と無意識に震える甘い声で俺を誘った。


今でも耳に残る、それからの彼女の甘い声。
何度、俺の名を呼ぶあの唇に貪るように口付けたか分からない。
その度に酷くなる煽りに俺と空は最奥まで沈み込んだ。
そうして俺が欲しがったのは彼女のスベテ(・・・)。現実との隔たりは絶望的だった。

そう、俺は彼女とシたくなかった訳ではないのだ。
ただ恐かっただけ。
だって、あの行為は俺ら2人の道を完全に分離するためのものだったから。




大きな溜め息と共に麦茶を飲み干す。
既に3杯目だった。
それだけ飲んでも、喉が渇いて仕方が無かった。

普段、サッカーの後でさえ、こんなに喉の渇きを訴えることはないのに。
(あぁ、そうか)
そこで初めて"自分が"渇いているという事実に気がついた。





行為の後、彼女は泣いた。
何度も『こんなことさせて、ごめんなさい』と謝りながら。
なんだか無性に腹が立った。
謝る空にも、謝らせている自分自身にも。

『謝んなよ』
謝られると苛々が募るからとは言えず、ただ困ったように笑う俺に、空が顔を上げた。
『でも、』
空が抗議の声を上げて、俺を見上げる。
濡れた瞳にビクンと心臓が跳ねたが、敢えて何でもないように俺は笑い続けた。

笑顔を本物のそれと見分けがつかないように作るのが得意になったのはいつからだろう。

『まっいいんじゃないか?俺たち、お年頃だし』
にやりと不敵に笑ってやると空はすこしきょとんとした後、傍目からでも分かるくらい真っ赤になって、『馬鹿』と呟き俺を睨んだ。
白い肌がよりいっそう頬の赤みを引き立て、俺の目に焼きつく。

ぐらりと視界が歪んだ。


俺らは結局、ろくに会話もせずにその後の時間を過ごした。
ただ、どちらからともなく握られた、彼女の手の温もりが心に染みた。


やがて空は最後に『さよなら』と言って、一人ホテルを後にした。
最後に見せた笑顔は一点の曇りのない、とても綺麗なものだった。

空が去って、急に部屋が広く感じた。
まっ白い部屋にただ一つ溶け合わない俺の細い影は黒く濁って淀みをつくっていた。


しばらくした後、部屋をあとにする時になって、俺は戸口の横に部屋の料金全額が置いてあるのを見つけたのだ。





ふぅと息を吐き出し、空のコップに4杯目の麦茶を次いだ。

トーストや目玉焼きなどは既に胃の中におさめてあったので、コップだけ持って椅子から立ち上がる。とその時、メールの着信音がけたたましく隣の部屋で鳴り響いた。
麦茶片手にそれを取りに行って、流しに向かいながら、携帯を開く。

一通の未読メールの表示。
送信者には石田ヤマトと名が書かれていた。
またか…と思いながらも、慣れた手つきでそれを見、「なんだ、また誘いのメールか」と一言呟く。
今はそんな気分じゃないんだけどなぁ…とボヤキながら、どう返事をするかを考えた。
ちなみに返信しないという選択肢はない。だって後になってめんどくさいことになること請け合いだ。

「つか、今財布の中スッカラカンなんだけど」

苦笑いして、麦茶を一気に煽った。
流しに飲み干したコップを置く。
そしてしばらく携帯の画面を凝視して、ニヤリと笑った。
―――閃いた。
「ヤマトに空への金の返却のパシリをやってもらって、そのご褒美に誘いに乗ってやるか」
俺って冴えてるーと自画自賛してみて、返信メールの作成に入った。



「さてっと」
ひとつ大きく伸びをして。

ヤマトにメールを送りながら、リビングへと歩き出す。
ふと肩を震わせて泣く、一人の少女の後ろ姿が脳裏に浮かんだ。

アイツ………多分泣いてんだろうなぁ。

携帯をたっぷり十秒見つめた後、おもむろにアドレス帳を開く。

―――駄目で元々、丈に頼んでみるか。
アイツなら迷いなく、託せるから。

そう思って、胸が苦しくなった。キリキリと細紐で締めつけられるのは、俺の未練がましい心か。
それを瞳を閉じて奥に沈めこんで、ぽつりと呟いた。

「優しくしてやってくれよ。アイツはホントにいい奴なんだ……」

震える唇を無理矢理笑みの形に引き結ぶ。傍から見れば、さぞ滑稽だろう。けれど、こうしないと俺はきっと崩れる。
自分が脆いことはよく知っていた。


やがてお目当ての名前を見つけた俺は、幾ばかの苦悶ののち、メール作成ボタンをカチリと押した。










一応、太一→←空。太一総受け前提で(爆)。
やっぱり報われない太空。私の書く太空ではそれがデフォな気がしてきた…。

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Category : ss
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