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Posted by 春乃 綺 on  | 

コンチータ様とコックの最後の晩餐(カイメイ)

「コンチータ様、そろそろお暇を頂いてもいいでしょうか」

うだつの上がらないウチのコックが満面の笑みでそう言ってきたのは、紫の茄子とピンクのタコのオードブルを食べ終わったときだった。
私は馬鹿なことをのたまったその男に冷めた目をくれてやる。


「カイト、あんたはたった今、自分が何を言ったのか、ちゃんと分かってるの?」
「えぇ」
「暇を貰った奴の行き先など、いままで散々見てきたアンタなら知ってるでしょう? 何せ、調理してきたのはアンタなんだから」


それでも?と、問う私にカイトは「えぇ」と笑顔のまま頷いた。
ふぅんと気のない返事を奴に返し、私は視線をカイトから外す。
そうして考え巡らせて行き着いたことはといえば。
この男がいなくなったら、調理する者が誰もいなくなるという事実だった。


「…却下ね。私はあんたを今は食べない」
「何故です?コンチータ様」
「誰がアンタを調理するのよ」
「召使のレンやメイド係のリンがいるでしょう」
「ダメね。あの子たちにロクな調理なんて期待できない。ブリオッシュだけは絶品だけど」


それに私は殊の外、この男の作る料理を気に入っていた。
屋敷の外では悪食と悪名高い私にでも、まだそれを感じられるだけの味覚は残っていたのだ。
カイトは「ふむ…」と吐息混じりの唸りをして、顎に手をそえて首を捻った。


「そうは言われても、俺は辞めるつもりでいますので…。―――うーん、それじゃあ」

この時、私は、カイトが"食べない方向でいきましょうか"ということを予想していた。いえ、勿論私は食す気でいたけど。
職を辞すことがカイトの中で決定事項である今、奴の行先は私の胃の中しかないのだ。それが今まで続いてきた、この屋敷の慣習。
過去に解雇されたツカエナイ奴らは、誰もが震えて「命だけは」と縋った。
さて、この男もそうなのだろうか、と半信半疑ながらも、私は机の上のフォークとナイフを握る。
これでカイトが逃げ出しそうになっても、食事を開始することが出来る。
そうしてカイトを食せる喜びに浸った。


あぁ、このコックは一体どんな甘美な味がするのでしょうね。

この男の料理が食べられなくなるのは酷く残念だけど、私はこの男の味には前々から大層興味があったのだ。
料理は絶品だったけれど、果たして男自身もおいしいのだろうか、と。
私はずっと念願であったカイトを食すということにやっとのことで辿り着けた幸福感にニンマリと笑みを作った。
そんな私を見ても、男は全く動じなかった。

それどころか嬉しそうに目を細め、


「そのナイフとフォークでコンチータ様自らが俺を調理してください」

と私に告げたのだ。


それならばとカイトに馬乗りになった私は、手始めに奴の服のボタンを外していった。
そうして今まで服に隠されてきた健康な肢体をあらわにしていく。
あぁ、本当になんて美味しそうなの。
思わず喉が鳴って、カイトの胸板をそっと撫でた。
カイトは私にされるがまま、下から私の顔を見上げている。
今までのパターンだったら、此処で叫び声でも上げて、大慌てで暴れるのだけれど。この男がしていることといえば、私の顔を凝視し続けていることだけだった。まぁ、それも私にとっては都合がいいことこの上ない。

「………抵抗しないのね、カイト」

しても逃がしてなんてあげないけど。
ふふ、と私は楽しげに微笑みを零した。そうするとカイトもやけに晴れやかな顔でニッコリと笑う。
それはあまりにも状況にそぐわない笑みだった。なんだかそんな笑みをするカイトが気に入らなくて、今の状況を知らしめるべく、私はカイトの首筋に強く歯を立てる。

「……っ!」

カイトが痛みに小さく声を上げる。
しかしその顔は恐怖に引き攣るどころか、うっとりとした表情を浮かべていて。
いつも(使用人の捕食)とどこか違うことを、流石にここまでくれば私も気付いていた。
もしかして、と私の中にある憶測が浮かび上がる。
しなやかなカイトの体にナイフを走らせながら、「ねぇ、カイト」と彼にそのことを尋ねた。


「もしかして私に食べられたかったの。だから暇を貰いたいなんて言ったのかしら」
「…っ、ぃっ…えぇ、それがコンチータ様と一つになれる1番の方法です、から…っ」
「―――狂ってるわね」
「っ、ふふ…、それ、は貴女もでしょ…う」


痛みに眉をしかめながらも、その美しい男は「俺は貴女が欲しかったのですよ」と零し、「そろそろ本気で痛いので、一思いにヤッてくれません?」などとどこまでも飄々と言ってのける。

もうすぐアンタは死ぬのに。
それでも満面の笑みを浮かべられてるなんて、本当に狂った男。

だから、だったのかもしれない。私なんかを想って死に絶えるこの男が、余りに哀れで可哀相だったから。


「カイト」
「っ……、っは、い…っ?」
「餞別よ」


そう言ってふわりと一瞬だけ触れた、私と奴の唇。
本来なら、私は自分から好んでキスなんてしない。私にとって、口は自身の深い欲を満たしてくれる神聖な場所であり、それ以外に使われることなど許せない。
それなのに、私がこの男にそれを許したのは。

カイトは大きく目を見開き、虚ろな目に涙の膜をはった。
そして私の目を必死に見据えて叫ぶ。


「愛し、て…愛してい…ます…っ、"メイコ"さま…っ」

久々に聞いた自分本来の名前。
男はその言葉を紡ぐと満足しきったように、瞳を閉じた。
私はもう一度その男に血濡れのクチヅケを送り―――――男の左胸に勢いよくナイフを突き立てたのだった。

突き立てた瞬間、カイトの体が鯛のように跳ね、そのすぐあとには一切動かなくなった。
まだ温かい体からは、どくどくと真っ赤な鮮血が滴り落ちている。
まるで上質の赤ワインのようなソレを指に絡めて、ペロリと舐め上げた。

――――やはり、絶品の料理を作る男は絶品の味がするのね。

口角をあげて、その液体に舌鼓をうつ。
しばらくすると、赤の液体は唾と共に飲み込まれてしまい、私は無防備に横たわるカイト――否、カイトだったものに視線を戻す。
カイトの美しい身体に自身の底しれぬ欲がふつふつと疼き、
私はゆっくりとその身体に近付き、何度目かになる晩餐を再開したのだった。


やがて、晩餐を終えた時に残ったのは、
カイトの白く美しい骨と

私の胸をくすぶる何とも言えぬ虚しさだけだった。





("私がカイトにキスした理由"?)
(余りにもアイツが哀れで可哀想で―――馬鹿だったからよ)










悪ノPの楽曲「悪食娘コンチータ」から。

めーちゃんもKAITOも怖いよ…っ!ヤンデレだよ!
なんか私の書く作品ってこんなんばっかな気がするの、なんでなのかしら(←)




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