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ぼくとも。 |

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Posted by 春乃 綺 on  | 

Shiny Days 1 (太空)

少しヒールの高いサンダルが小走りするたびに軽やかな音を立てる。
向かい風を受けて茶色いスカートがひらりと舞った。














Shiny Days (前編)











目の前を埋め尽くすような人の多さに空はげんなりとして、溜息を吐いた。
今は9時15分前。
目的の場所までは走って15分かかるか、かからないぐらいで、遅刻ぎりぎりの時刻で。
こんなことならもう少し早く家を出発すればよかったと思ったが、あの状況ではそれも不可能だったことを思い出す。
昨日はたまたま泊まりに来ていたミミに恋人の愚痴を一晩中聞かされていたのだ。いや、それは別に遅れた理由には正確には関係ない。

寧ろいけないのは。

「今日の朝、突然『出掛けないか?』なんて電話してきた太一よ…」

身勝手な幼馴染みを恨めしく思って、ついいつもより低い声で呟いた。
そのあと横で電話を聞いていたミミが、「あら、デートのお誘いじゃない!!じゃあ目一杯着飾らなくちゃねっ、空さん♪」と異様な張り切りをみせ、第一回着せ替え大会が開催されてしまったのだ。
…………そこまで考えてでミミも遅れた理由に入ることに気が付いた。
なぜ自分の回り、というか、あの時のメンバーには変わり者が多いのかしらと頭痛のする頭を抱えた。

と、ふいに左腕にはめられた腕時計が目に入って、我に返る。
「(って現実逃避してる場合じゃなかった)」
一旦考えることを放棄し、空は目の前の人を左、右と避けながら、目的地に向かって走り出した。




* * *

ようやく待ち合わせの場所が見えて、空はホッと息をついた。
なんとか遅れずに済んだようで、乱れた息を整えながら、辺りを見渡す。
もう9時になるから、太一が来ていてもいい時間だ。

……………遅刻していなければの話だが。
どうせ、『悪ぃ、遅刻しちまったぁ』などとあっけらかんとした笑顔で宣うのよ、あいつは。

遅刻常習犯である彼の所業の数々をこれまで嫌って程見てきた空は、その状況がありありと想像できてしまい。自分で考えて腹が立ってきた。
あれだけ自分を走らせておいて、遅れるなんてこと絶対に許さない。

「(これで遅れたりしたら覚悟してなさいよ)」

そう心に決めて、前へ一歩、足を踏み出した。




* * *

「あっいた…」
目立つ茶の髪を持った彼はこの辺りでは1番目立つオブジェの前にいた。
半分遅れることを予想していたので、少し目を見開いてしまう。
だってあの太一が時間通りに来ることなんて、あまりあることではないから。

その時、太一の視線がこちらに向けられ。
何気ないその仕種にドキリと心臓が一つ跳ねた。

「(……って、なんで…?)」
心臓が跳ねた?幼なじみ(たいち)相手に?なんで、また。

よく分からないそれに内心で首を傾げながらも適当にやり過ごし、空は苦笑いで右手を少し挙げた。
すると太一の顔がみるみる不服そうに変わっていって。

そうして気怠げに近寄って来た彼は開口一番に

「遅ぇよ」

と言うのだった。




* * *

「ねぇ、なんで突然呼び出したの?」
横を同じスピードで歩く太一を見上げて、空は疑問に思っていたことを彼に尋ねた。
高校生になって、学校が別になったからか、空と太一が二人で会う機会は格段に減った。
それが今回、太一から突然の呼び出し。空の疑問は至極妥当なものだった。
空の問い掛けを受け、太一はチラリと空に目をくれてから、また前を向き直し、その疑問に答える。

「最近会ってないから、久しぶりに会いたいと思って」

彼の至ってシンプルな答えに、空は「ふぅん」と気のない返事をして、太一から顔を反らした。
すると急に口数が減った空を一瞥して、太一が小さく笑い。
「空」
そう彼女に呼び掛けた。

不意に名前を呼ばれて、再び太一を見上げることになった空の目の前にあったのは、あの頃より大分大人びた太一の笑顔だった。キュッと胸がつまる感覚がする。

「なっ何?」
それを知られたくなくて、慌てて取り繕うように言った空の言葉に、太一は笑顔を無邪気なそれへと変えて尋ねた。


「どこ行きたい?」




* * *

結局、遊びのプランは誘った太一ではなく、誘われた空が立てることになったのだった。
二人は映画を見た後、ウィンドウショッピングを楽しみ。そして今はマックでお昼ご飯を共にしていた。

「全く、呆れちゃうわ」
カフェオレ入りのグラスをストローで掻き交ぜながら、空は深く溜息をついて、そう言った。
言われた太一はハンバーガーに噛り付こうとしていたのを止め、胡乱げに目を細めて、首を傾げる。

「何が?」
まるで心当たりがありませんといった様子の彼に、空はまた一つ溜息を漏らす。

「あのねぇ、誘うなら何処に行くかぐらい考えときなさいよ」
まっ太一らしいけど、と続けられた言葉に太一は顔をしかめて、口を尖らせる。

「お前、俺がそういうの考えられるような奴に見えるか?」
「………全くもって見えないわね」

痛む頭に手を添えて(正確には額だが)、空が呆れたとばかりに大きく溜息も零す。それには太一へのちょっとした嫌味も込めていた、のだが。
それを読み取らない太一は「だろ?」と何故か得意げな笑みを浮かべた。

「"だろ?"じゃ、ないわよ。ちょっと直す努力をしなさいよ」
「俺は向かないことはしない主義なんだよ。それに、」
空が考えてくれるから、いんだよ。

ニカリといっそ晴れやかに笑ってみせた彼は、ちゃんと分かってるのだろうか。
それがどういうことを意味するのか、を。

視界がブレる。クラクラと世界が回る。その理由は出来れば暑さであって欲しかった。
空は、太一と交えていた視線を一旦反らし、喉の奥に溜まった唾を飲み込んだ。
そして。

「――――そ。」
動揺なんてしてない。決して心が揺さぶられてなんて、いないんだから。
思い込むように何度も何度も心の中でそう繰り返し、空は端的に太一にその言葉を返した。
素っ気ないくらいのその言葉に太一は決して気付かない。
空が圧し込めた気持ちになんて、彼は気付かなくていいのだ。

震える右手に持ったコップからカフェオレを一口啜り上げる。
そうしてゴクリとその液体は喉奥へと圧し込められた。

液体が減った拍子に、グラスの氷がカラッと小気味よく音を立てた。




* * *

「あれ、太一と武之内じゃん?」

声をかけられたのは、店に入ってから20分ぐらいしてからのことだった。
それまでお互いの高校についての話をしていた二人は聞き覚えのある声に上を仰ぎ見る。
そこにいたのは小学校、中学校が一緒だった元クラスメイトで。
「よぉ」と気安く返した太一と違い、空は特に取り留めて仲が良かった訳ではなかったので、ペコリと頭を下げるだけに留まる。
そのクラスメイトは二人を交互にやや見遣ってから、何でもないようにきいてきた。

「二人はデートか?」

瞬間、空の体温が上昇した。

「(な、ななんてことをいうのよ…!!)」
恥ずかしさのあまり、顔を上げていられなくて、空は赤らめられた顔を隠すために俯く。そして太一が慌てて否定してくれるのを待った。
しかし次に聞こえてきたのは空の予想に反した言葉だった。

「あー…うん、まぁな」

苦笑混じりで言われた太一の言葉に空の挙動がピタリと止まった。
空は無意識にいつの間にか顔を上げていて、太一を呆然と見つめた。
太一と彼が何か話しているようだったが空の耳には雑音としてしか流れてこない。


胸が。
胸が凄く、痛い。
壊れてしまうと心が悲鳴を上げている。
どうして、こんなに虚しいの?
ドウシテ―――…。


いつの間にか太一と元クラスメイトの彼の話に区切りがついていたようで。
「んじゃ邪魔したな」
そう太一に告げ、彼は自身らの席を離れていった。太一はそれを目で追いながら笑う。

「アイツ昔と全然変わってないなぁ。なぁ空?………………空?」

空からの返答がないことに不審に思って、太一は空に目を向けた。
名前を呼ばれて少ししてから、空は我に返ったように「え?」とキョトンとした顔を太一に向けた。
そして太一に何か問われていたこと理解して、慌てて適当な言葉を並べる。

「あっ、うん、そうね」

そう言って笑った彼女に、太一は眉間に皺を寄せた。
太一が急に顔をしかめたことに空は目を見開いた。

「――っ」
「そら」

太一は挙動不審な態度をとる空を問い質した。

「お前、どうしたんだよ」
「な、何が?」
「無理して笑ってる気がする」
「……そんなことないわよ?」

太一の鋭さに内心舌を巻きながら、空はいつもの笑顔を作ってみせた。
それでも太一の目はごまかせないようで、その瞳に鋭さが増していく。
その視線に空は耐え切れなくなった。
なんとしてもごまかしきらなくてはならないのに。
――――この"感情"は。太一に知られるなんてこと、あってはならないのだ。

空は太一の前でわざと左腕の腕時計に目をやってみせた。全ては帰る口実を作る為に。


「ゴメン太一、今日ちょっと用があったの思い出しちゃった。私、帰るね」

明るくそう告げ、横にある鞄を引っつかんだ。素早く席を立ち上がり、レシートを掴んで、会計へと向かう。
早くここから――太一から離れたかった。こんなに悲しいのが、何故かなんて分かりたくもなかった。
彼の前で泣くなんて、そんなことはしたくなかった。だって彼と私は幼馴染みという関係でしかない。そんな私が、彼に何を望んでいるっていうの。

と、その時後ろから手を取られる。
「そら!」
太一が怒りを露にした様子で空を見上げていた。
きっと彼には、用事のせいで帰るのではないことがばれてしまっているのだろう。
そのことを悟り、空は瞑目して、太一から見えないように情けない表情の顔を隠す。

まだ。
まだ、泣いちゃだめなのよ。

何度も自分にそう言い聞かせた。
せめて、この店を出るまでは。

空は自身の腕を掴んでいる太一の手を無理矢理振り払った。そうして彼に気丈な笑顔を向ける。

「太一、ありがと」
今日は楽しかった。

偽りの笑顔がどうか醜く歪んでないことを願った。

「会計は私が払っとくね?だから太一はごゆっくり」
捨て置くような心地でその言葉を紡いだ空はパッと身を翻し、太一に背を向けた。



やがて会計を済ませた彼女は何食わぬ顔でマックから出ていく。
その際にドアに取り付けられた鈴がチリンと空しく一鳴りし、そのドアは静かに閉ざされたのだった。






(つづく)







Shiny Daysは元サイトの小説を加筆修正したものです。ぶっちゃけ、まだ続きます。
最後らへん大分展開違うのですが、お気づきの方はいらっしゃるでしょうか?

つーか、サイトでのデジ小説は本当に久しぶりですな。日記ではつい先日書いたのですが。
太空はやっぱり切ない方が書きやすいです。なんて言う私は駄目駄目ですかね←
やっぱ、そろそろ太空の甘々を書いてみなくちゃダメですよねぇ。
ぶっちゃけ光ミミのあの甘ったるさが少しでもこっち(太空)に移行すればいいのに、なんて他力本願なことを考えていたりする。




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