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Posted by 春乃 綺 on  | 

きみの好きなところ[後篇] (君に届け)

風爽 つづき。

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花壇の草むしりを終えて、爽子はじょうろ片手に花壇の花や薬草に水をあげる。
水をあげると花や薬草が自分に向かって、微笑んでくれるみたいに水が滴って。
それが爽子はすごく好きだった。
思わずこちらまで微笑みながら、爽子は水を花壇に振り撒いた。
と、その時、上機嫌で花に水をあげていた爽子の頭上から声がかかった。

「水やり、終わりそう?」
驚いて、パッと顔をあげるとそこにいたのは。

「か、ぜはやくん…」

何故ここに、と繋げようとすると、風早はそれをいち早く察して、それを遮る形で爽子の疑問に答える。

「ちょっと用事があって、近く通り掛かったら、黒沼が花壇に水撒いてたから」

声かけたんだ、と風早は笑って言った。
それを見て、よかった、今度は笑ってくれた、と爽子が安堵の息を吐く。
すると風早は何?、と小首を傾げて。
それに慌てて首を振ると、爽子も笑って一旦水を撒く手を休めた。

「あ、邪魔してゴメンっ!」
「いいの。…話したかったから、風早くんと」

風早が爽子の水やりの手を止めてしまったことを慌てて謝ると、爽子は焦ったように首をふるるっと左右に振ったあと、目を伏せ頬を少し赤くする。

そう、ずっと話したかった。
なのに久しぶりで……言葉が出てこない。

目を伏せたまま、顔を赤らめ、そんなことを言う爽子につられて、風早も頬を染めた。
そして。

「…………うん、俺もずっと、話したかった」

首の後ろを掌で押さえ、視線を爽子から逸らしながら、風早は小さくそう漏らした。
その言葉を聞いて、爽子は下ろしていた視線をパッと風早に合わせる。
そして目に入ったのは。

そう。
神様みたいな風早くんがふいに見せる、こんな表情に。
私は惹かれたのだ。


そんなことを思ってしまえば、爽子の頬は赤くなる一方で、それを受けて風早の頬も同じように赤くなる。
二人して、ふしゅー、と蒸気を頭の上から発しながらも、視線は未だ交わらない。
痛いくらいの沈黙と空気に二人、耐え切れなくなったころ。

「おー?浮かれ早とちっ太君とその嫁じゃねぇか。こんな時間まで何、ときめきメモリあってんだよ」

そんな空気をぶち壊した奴がいた。

「…ピンっ!」
真っ赤な顔で声のした方を風早が向くと――――――――明らかに小馬鹿にしている顔で自分を見ているピンと目があった。
途端に薄れるさっきまでの顔のほてりと高揚感。

「―――~~~かえれ!マジで帰れ!」
「はー!?お前こそ帰れ!」
そんな抵レベルな会話を、顔を近付けてする風早とピン。
(ちなみに爽子は完全に置いてけぼりである)

「だいたい、なんでピンがここにいんだよ!それから俺は、まだとちってない!!」
「俺を夕日が呼んでたんだよ(意味不明)。つーかお前、自分で"まだとちってない"とか言っちまうから器ちっちぇんだよ!」

俺様を見習やがれ、と胸を張って声高らかにそう言い切るピン。
そんなピンに本気でここから消えてほしくなった風早である。
好きな娘の前で器ちっさいと言い切られたら、それも仕方ないことなのだが。

「あーもぅ、行こう、黒沼!!」
ピンの言動に耐え切れなくなった風早は、二人の間でおろおろしていた爽子の手を引いて、そこから逃げるように歩き出した。
そんな二人に後ろからピンの声が追いかけてくる。

「お!一緒に帰んのか!これからアハハウフフ言いながら青臭い青春を謳歌するのか!」

黒沼、その青臭いガキをしっかり守るんだぞ!と最後までゴーイングマイウェイを貫き通したピンの高笑いに背中押される感じで二人は気がつけば、昇降口まで来ていたのだった。




「っっごめん!!勝手に手、引いてきちゃったけど、まだ水やり終わってないんだよね…?」

もどろっか、と再度爽子の手を引いて花壇に戻ろうとする風早に、爽子の「まままま待ってっ!!!」という静止の声が声が掛かる。

「だ、大丈夫だよっ!一応もう終わってるから……っ!!」
「あ、そっか…」
「う、うんっ…」

そんな会話をしながら、じょうろをもとあった場所に戻し、改めて向き合う二人。
そうすれば自ずとあの空気に逆戻りしていて。
二人とも顔を赤らめて、視線は宙を彷徨う。
それでも―――――――お互い握られた手だけは、どうしても離すことができなくて。

このまま、お別れなんて……………やだな。
だってせっかく、久しぶりにこうして話せたんだもの。

俯いて、握られた互いの手ををじっと見つめたまま、爽子はグルグルと考える。纏まらない思考。赤くなるばかりの顔はひどく恥かしくて。

でも、それでも、行き着いてしまった思考の終着点は。


やっぱり、私は――――――――――――。


「「あの、(ね/さ)」」


「「きょ、今日一緒に帰らない!?」」



やっと交わった視線。
二人重なった声、言葉。
言いたかったこと、思ったことは二人同じで。

それに呆れたように二人、笑った後。


「…帰ろっか」

「うん…」

 
夕焼けのなか、伸びる二つの影法師。





 
そう、好きになったのは。

私を好きになってくれたあなた。 




おしまい。


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なんだか、「えぇ!?こんな終わり方かよ!?」という声が聞こえてきそうなラストだな(汗)
えー、改めて、君の好きなところ 1・2読んで下さってありがとうございました。
移転前に書いた小説があまりにも気に入らなくて、一部書き直しました。
まだ、、、満足いくものに仕上がったと思う。

風爽小説といえるか、よく分からない出来ですが(やけにピン目立ってるし)、少しでも楽しんで頂けたなら、私は万々歳でございます。
 
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