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ぼくとも。 |

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Posted by 春乃 綺 on  | 

カルマ 3話

カルマ3話。いきなりの過去編スタート(←)

1話2話見ていない方はさきにそちらを見ることをお勧めします。
この話からみても、何がなんだかわからないと思うので^^;










アグモンを強く抱きしめて、太一は鳴咽を漏らした。
苦しかった。ずっとずっと、苦しかったんだ。
あの時からずっと、ひた隠しにしてきた気持ちがカベを壊し、一気に決壊した。


自身の肩に埋められた太一の頭をアグモンはゆっくりと摩る。
「だいじょーぶ、だいじょうぶだよ………たいち」
太一の体がビクリと震える。
それでも太一の頭を優しく撫で続けると、太一の体の強張りが徐々に解けて、やがてコテリと自分に体重を預けてきた。
聞こえてくるのは穏やかで規則性のある吐息。どうやら眠ってしまったらしい。
そのことを感じ取って、同時に無理もないなとアグモンは思う。



太一はここ数週間、ろくな睡眠を取っていなかったみたいだから。
アグモンは寝入ってしまった太一の顔をそっと覗き込んだ。
その顔は普段よりずっとあどけなくて、あんな苦しそうな顔なんてしてなくて。
アグモンは悲しげに視線を落とす。
そして太一の体をぎゅっと抱きしめた。


「――――――だいじょうぶだよ、たいち」


ぼくはいつでも君のために戦えるから。


だからホントに苦しくなったら、僕が君を守るよ。




幸福だったあの頃からずっとそう決めてたんだから。





 * * *





ぱちりと目が覚めた。

すると途端に目に入り込んでくる朝日に、太一は目を細めた。
ぼーっとした頭で天井にあるいくつかの汚れを見つけ、あー、いい加減掃除しなくちゃなー、と考えて、一気に気が滅入る。

『お兄ちゃーん』

とその時、戸口から愛妹のヒカリの声が聞こえてきて。
太一はさして柔らかくもないベットから気怠げに身を起こした。

『なんだ、ヒカリ』
『いー加減に起きてよ。お母さん、カンカンだよ』

ため息と共に言われたヒカリの言葉にそれはまずいと太一は慌ててベッドから飛び降り、タンスから普段着を取り出す。
その様子を呆れ眼で見遣った後、お母さーん、お兄ちゃん起きたよー、とヒカリが言いながら、部屋を去っていく。
それを横目で追い、ヒカリが母に上手く言い繕ってくれることを祈った。







普段着を素早く来て、太一は居間に向かった。
そろりと母の顔色を伺うと、カンカンと称する程の怒りは見受けられなかった。
太一の読み通り、ヒカリがなんとかしてくれたのだろう。
内心よく出来た実妹に称賛の拍手を送り、太一は母に近づいていく。
『おはよー母さん』
『おはようってアンタねぇ…』
太一をじとりと見遣り、裕子もまた深く溜息を吐いた。
言っても無駄だと思ったのだろう。
………賢明な判断である。

もういいわ、と裕子は首を振り、丁度今自身が持っていた紙袋を太一に渡した。
太一はきょとんとした顔でそれを受け取る。

『何これ』
『お野菜』

いや、見りゃ分かる。そうじゃなくて。

『なんで俺に野菜渡すんだよ?』
首を傾げて太一がそう問うと、裕子はやけにニッコリとした笑顔を見せて。

『届けてきて?』

『…………………何処に』

『石田さん家』

『…………』

母の笑顔から、おら行け、すぐ行け、というオーラを感じ取り、太一は肩を落としコックリと頷いた。
逆らったら最期、どんな鋭利な言葉が飛び出してくるか分からないからである。
世間一般はどうか知らないが、八神家に限れば、母―――というか女は強かった。
太一は母の逆鱗に触れないうちにと、味噌汁を口の中に流し込んでから、たくあんを二切つまみ。

野菜片手に、母から言い遣った用事に出掛けたのだった。



昼前だからか街は活気に溢れていた。
家々が立ち並ぶ舗装されてない砂利道を太一は駆け足で進んでいく。
太一たちが住む第13地区は24あるベンチェア王国の中でも都市化が進んでいない地区であるため、舗装されている道の方が少なかったりするのだが。
13地区はスラム街から1番近い場所に位置する地区なため、政府もあまり手を加えられずにいる……らしい、母さんや父さん、光子郎の話では。
まぁ、別に都市化してなくても住みやすければどちらでもいい、と地区の人達はそのことにあまり頓着していない。下水や水道、電気などの最低限の整備はされているので生活に困ることも少ないし。

なにより太一はこの地区のこの雰囲気が好きだった。

『おう、太一じゃねぇか。おつかいかー?』
こんな風に自分に気軽に声を掛けてくれる気のいいおじさんや、

『近くでまた凶悪なデジモンが出たらしいから気をつけていくんだよ』
他人の子である自分をまるで我が子のように心配してくれるお人よしなおばさんもいた。

こんな雰囲気のこの地区が本当に太一は好きだったのだ。

『わーかってるよ♪さんきゅ、おじさん、おばさん!』
太一は声を掛けてきた二人に手を上げて答えると、通い慣れたヤマトの家へと急いだ。





ヤマトの家である石田家は第13地区の外れの方に位置している。
というのもヤマトの親父さんがマスコミ関係の仕事についているため、都心により近いようにと考えた末に、そこに家を借りたらしい。
ならば第13地区ではなくて、もっと都心に近い地区に移ればいいのだが、どうやらそれはヤマトが嫌がったらしく。
どうしてかと聞いても、下手な言い訳ばかりで結局答えはもらえなかったのだが。
その時のヤマトの顔がなんとなく痛々しげなものだったから、それ以来その話題を出すこともなくなってしまった。

『おーい、ヤマトー。いるかー?』
太一は目の前のドアをおざなりに数回ノックした。
ドアはガンガンという音―間違ってもコンコンではない―を鳴らしただけで、太一を迎え入れてはくれず。中からは物音もしないし。
『留守か?』
珍しい。おじさんはいなくても、ヤマトは大体家にいるのに。首を傾げて、もう一回ガンガンと扉を叩いた。今度は少し強めに。
でもやはり扉はうんともすんとも言わずに沈黙を保ったままだ。
太一は野菜片手に少し悩んだ。
野菜を扉の前に放置していくわけにはいかないだろう。今日はあいにく夏日で蒸し暑い。野菜を放置などしたら、途端に萎びてしまうだろう。
『やーまっとくーんっ!』
何度かドンドンと扉を叩いて、中からやっぱり反応がないことを見て取り、やがて太一はドアに手を掛けた。
無断で入るんじゃねぇよこの馬鹿、と碧い目に鋭い光を乗せたアイツが怒りそうだが、仕方ない。
居なかった奴が悪いんだろうが。
そんな言い訳じみたことを考えながら、太一は扉を開けようとノブを回そうとした―――――ところで。

『―――煩い。朝っぱらから何の用だ』

突然扉が開き、そこから金髪の不機嫌そうな顔が覗いた。
いきなり扉が開いたことで避け切れなかった太一はそのまま顔面でドアを受け止めるはめになり。……鈍い音がした。

『――――いっ!~~~っ!! ――居たのかよぉ、ヤマトー…』
『ついさっきまで寝てたんだよ』

暗にお前に叩き起こされたんだ、と言外にヤマトが語る。勿論、そんなこと気にする太一ではないが。
『あー…痛かった』
太一が顔を摩りながら息を吐くと。ヤマトは『無い鼻がさらに低くならなくて良かったな』と笑う。
『うるせぇ』
『―――で? 何の用で来たんだ、太一』
大した用じゃなかったらただじゃ置かないからな、とヤマトが目を眇める。
太一は母に持たされた野菜に目を落とし、ほら、とヤマトにそれを渡した。

『母さんから』
『お、悪いな』

嬉しそうにそれを受け取り、ヤマトはブツブツと何ごとかを呟きながら、家の中へと戻っていく。
おそらくこれらの野菜をどんな料理に使おうか、とか、これで食費がいくら浮く、とかを考えているのだろう。
全くたいした主夫ぶりである。

ヤマトのその様子にやや呆れながら、太一も彼の後に続いて、家の中に入っていった。
家の中は男世帯とは思えぬ程、片付いていた。まぁ、これもヤマトの功績なのだろうが。
ヤマトが台所へ野菜を仕舞いに行っている間、太一はテーブルの側にある座布団に腰を下ろす。
台所から麦茶でいいかーと問われ、あぁと返事を返し。
暫くして麦茶の入ったコップを二つ持ってヤマトが台所から戻ってきた。
太一の前と自分の前にそれぞれコップを置いて、ヤマトも座布団に腰を下ろす。
太一は有り難く、それに口をつけた。

『そういえばおじさんは?』
『仕事。なんか今忙しいらしい』
『ふーん』

こんな会話を皮切りに太一とヤマトは最近あった出来事を話し始めた。
いくら親友だからと言っても、彼らの家は割合離れた場所にあったため、こうして会える日も限られている。
だから情報交換と称して、太一"達"は自身の身の回りで変だったこと、変わったことなどを話し合うようにしていた。
それというのも、太一達が他とは少し異なった子供だったことが要因であったのだが。

『ガブモンが言ってたんだが、最近、スラム街で可笑しな動きがあるらしい』
『スラム街?』
『あぁ。よくは分からないらしいが、マフィアと結び付いて、会合を開くことがしばしばあるらしいんだ』
『それならアグモンも言ってた。スラム街にマフィアがうろついてることが多くなったってな』

アグモン、ガブモン。それらはこの世の中で恐ろしい生き物とされるデジタルモンスター(通称デジモン)の一種である。
この時代、デジモンがあちこちを跳梁跋扈(チョウリョウバッコ)しており、人間がこれに刃向かうには苦渋を強いられることが殆どであった。
なにしろ手なずけるにも一苦労な上、強いデジモン程自己の力を他者に誇示したいという心が強いため、闘いを好むのだ。しかし同時に強いデジモンは、人間が脆弱であることを知っているので、欠片にも気に止めず、人間を襲うこともないのだが。
とにもかくにも、デジモンと人間は全く違う生物圏を生きていると言っても過言ではないのだ。

けれども、これに当て嵌まらない者も小数だが、いる。
それが太一やヤマトであり、アグモンやガブモンなのである。
彼らは所謂パートナー関係にあるのだ。
普通、デジモンは経験と時によってしか、進化することはできない。
けれど太一とアグモンのようにパートナー同士だと、人間がデジモンを進化させることも可能なのである。
どういう原理で進化が起こるかははっきりしていないが、パートナーの人間の心次第なのではないか、というのが仲間である光子郎の考えであった。

―――――――そしてデジモンたちは太一たちのことを"The selected children[選ばれし子供たち]"と呼ぶのである。
太一たちはそんな大層な名前は嫌だと言ったが、デジモン達がいうには、遥か昔からそう呼ばれて来た存在であったらしい、ので改名しようとはしなかった。




『まぁ、引き続き、アグモンたちに調べて貰えばいいんじゃね?』

太一が姿勢を崩しながら、ヤマトにそう言う。
この第13地区はスラム街から1番近い場所にあるため、スラム街であったことに1番影響を受けやすい場所でもあるのだ。
そのため、太一たちはスラム街の動向をパートナーデジモンに見張ってもらい、何かあれば内々に処理してきた。

今回もそれで片が付くと思っていた。



『そうだな。とりあえずそれで――――――――』

不意にヤマトの言葉がそこで途切れた。
窓の外を眺めていた彼の目が大きく見開かれて、唖然とした様子で固まり。
やがてヤマトが抑揚のない声で口にしたことは。


『………………おい、あれって街のほうじゃないか…?』
ヤマトの言葉を受けて、太一がゆっくりと振り向くと。

――――――――窓の外が真っ赤に染まっていた。

林を挟んでのところにある街が、炎に包まれていたのだ。
太一は呆然とそれを眺めていることしか出来なかった。
ただ、目に映る赤が、すごく目に焼き付いて………

『―――ぃち、太一っ!!何してんだ、行くぞっ!』

太一を引き戻したのはヤマトの疾呼の声だった。
慌ててヤマトの方に向き直ると、彼は立ち上がり、金目のものを鞄に詰めていて。
そして太一にもう一度、行くぞっ、と声を掛ける。
そこでようやく太一の頭が正常に動くことを始めた。

慌ててヤマトに続き、太一も玄関へと急ぐ途中。
ちかりと脳裏に声が掠めた。

『  助けて、おにいちゃん  』

『ヒカリ―――――?』


その声は今も太一の頭にこびりついて離れずにいるのだ。










 愛した人を再びこの腕に抱く夢 を見続けている俺等は。




  (提供:リライト)













カルマ3話。お待たせしました。しかし長いな(; ̄ー ̄A
いろんな設定が出てきて、私自身、訳が分からなくなりそうなので、そのうち設定をかきだそうと思います。

そういえば言ったことないと思いますが、この小説にはイメージソングなるものが存在します。
知っている方も大勢いらっしゃるでしょうが、
「ひぐらしのなく頃に 解」のオープニングである「奈落の花」です。
聞いてみれば、あぁ、なんとなくそんな感じかも、という気がするかもしれません。しないかもしれませんが(どっち)。



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Category : カルマ
Posted by 春乃 綺 on  | 2 comments  0 trackback

-2 Comments

[i:63734] says...""
3話読みました ちょっとずつこのお話の内容がわかってきました
次も楽しみにしています
2010.02.02 23:10 | URL | #- [edit]
秋月 says..."Re:"
3・4話は新しい情報が特に沢山出てくる話の内容になっていますね^^*
次話の更新はまたちょっと間が空きますが、ぼちぼちと待っていてくだされば嬉しいです~。
2010.02.05 21:54 | URL | #- [edit]

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