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ぼくとも。 |

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Posted by 春乃 綺 on  | 

紅の華 1

Episode1




「あなた、だあれ?」

くりくりした瞳の可愛らしい子だと思った。
それが――――リン。

あの日、彼女に声をかけられたのは、きっと偶然じゃなかったんだと思う。じゃあ運命なのかって?
…………僕はそんな運命欲しくはなかった。祈ったこともない神を初めて呪った。
"どうして君だったのか"と。
他の人間なら、僕はここまで悔やまなかったはずだから。


「おなまえ、ないの?」
初対面で彼女から見れば明らかに異質な容姿の僕にそう問い掛け、キョトンとした顔で首を傾げる。そんな人間、今までみたことなかったから初めは驚いた。でも関わるのも馬鹿馬鹿しくて、俺が彼女から視線を逸らし、その場を立ち去ろうとすると。
「…」
彼女はにっこりした笑みを浮かべて、僕の服の裾を掴んだのだ。
怪訝な気持ちでその少女を見遣る。

「…なに?」
「リンとあそぼー」

一人でつまんないの、と口を尖らせ言う少女を思わずまじまじと見つめてしまう。


は…あそぼ……?
ねー、ダメー?と聞かれ、しどろもどろで首を横に振った。
だ、駄目に決まってる。自分は他とは少々毛色が違うが、れっきとした狼だ。
人間、しかも幼子と遊ぶなど有り得ない。もしこの子の親に見つかったら、たちまち射殺対象にされるだろう。
そんなのゴメンだ。

「僕は君とは遊べないよ。他の子を誘って?」

「だってリンと遊んでくれる子いないんだもん」

少し膨れて、彼女はぼそぼそとそう言った。
それに僕は首を傾げる。

「遊んでくれない?」
「うん」
「…なんで?」
「リンが"ミナシゴ"だからだって」

自分でもよく分かっていないのか、彼女はそう言っても笑っていた。逆に僕は二の句が告げなくなった。
「……」

みなしご。
親がいない幼子のこと、だったと思う。
……そうか、この子親がいないのか…。

人間とは自分と違うものを受け入れることがなかなか出来ない生き物だと聞いたことがある。
だから親がいないこの子は普通の子供として周囲に受け入れられていないのだろう。子供ほどそれに顕著に表現する。それゆえ、"一緒に遊んでくれない"とこの子は言ったのだ。

――――似ていると思った。この幼子と、僕が。

でもその反面全然違うとも思った。彼女は眩しいくらいに晴れやかな笑みを見せるのだ。
もし僕がもう一度断ったら、彼女の笑顔は曇るのだろうか。
…………それをしたら、きっと僕は罪悪感に駆られるような気がした。
だから。

「――…すこしだけ、だよ」
僕が小さな声でそう告げると、彼女は嬉しそうな笑顔でしきりに首を振る。
嬉しそうに笑う彼女を見て、僕はほっ、と息を吐いて。ふいに気付いた。

っ、…違う。罪悪感とかじゃなくて、彼女の笑顔が曇るのを僕が見たくなかっただけなんだ。
それに気付いて、息が詰まった。なんでそんなこと―――。

そこで僕は首を振って、考えを中断した。
なにか、大変なことに気付いてしまいそうな気がして。

「おにいちゃん?」
ふと彼女が僕を呼んだ。我に返り顔をあげると、彼女が不思議そうな顔で僕を覗き込んでいる。

一瞬、喉に声が張り付いた。
声を出すために唾を飲み込み、「…何?」と彼女に笑いかけた。

「おにいちゃん、やさしいね。リン、好きー」

必死に貼付けていた笑顔が一瞬剥がれそうになり。慌てて繕うと再度彼女が首を傾げて僕を呼ぶので、彼女の欲しているであろう答えを紡ぐ。
「…そう?、ありがと?」
今、心臓が凍り付きそうになった。
気付きたくなかったことが自分でドアをこじ開けそうになり。


しっかりとそれにロックをして、僕はリンに何して遊ぶ?、と笑顔を向けた。






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Category : 紅の華
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