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ぼくとも。 |

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Posted by 春乃 綺 on  | 

カルマ 2話

先程までターゲットだった男が居た、敵のアジトからその足で帰った太一は一先ず指令室へと顔を出した。
白い服を来た所謂司令塔なる人間達の中でも、一際幼さが残る自分達の司令塔を見つけると、太一は足早にその彼のところへと近寄って行った。彼も戸口に居た太一に気付いたようでこちらに笑顔を向ける。
「太一さん、お疲れ様です」
「おう。任務は達成したぜ」
「…そうですか」
"任務"という単語を聞いて、光子郎の表情が一瞬曇ったが、それには気付かない振りをして太一はなんでもないように笑う。
「んじゃ確かに伝えたからな」
そう言い残して、太一は指令室を出ていこうとした。しかし、そこで光子郎があっ、と声を漏らすのを聞き留めて、太一は後ろを振り返った。当の光子郎はというと、一つ息を吐き、太一を真っ直ぐと見据えやっていた。
「指令長官に会われて行かなくて宜しいのですか?」
その口調と態度が"いつもの泉光子郎"から"一司令官"へと変わったのを太一は敏感に感じ取った。そして、泉司令官に背を向けていた状態から踵を返して。
「えぇ。何か不都合でもありますか?」
太一も、"八神太一"から"チームのリーダー"へと意識を切り替える。泉司令官は一つ、頭(かぶり)を振ったあと、クスリと小さく微笑した。
「いいえ。私はありませんが、長官が貴方にお会いしたがっていらしたので」
「そうですか。それではそのうち伺うとお伝えください」
それでは、と泉司令官に背を向け、太一は指令室を後にした。光子郎はもう太一を引き留めたりはしなかった。


 * * *


暗いコンクリートで覆われた廊下。
一面灰色のその建物の中は冷えた空気のみが漂っていた。指令室から太一の自室までの廊下は酷く寂しげで悲しいものだった。そう例えるならば、"ここ"は一種の牢獄だ。太一にとっても、誰にとっても。
しかし絶対脱出不可能なその牢獄は翼を自ら手折った自分にはちょうど良かったかもしれないと太一は自嘲気味に笑う。

そうさ。
「…もう決めたんだ」
何を迷うことがある。俺は、目的のために血に塗(まみ)れたんだ。
そのために人もたくさん殺して来た。
それでも。
―――――アイツらだけは巻き込みたくなかった、な。
「…ゴメン」
司令塔としての光子郎を見て、俺の心が凍えたように。人を殺すヤマトや空を見て、俺の心が痛んだように。彼等をあぁさせたのは弱い俺自身だ。
強くなりたい。
もっともっと強く――――――。


そう考えて、無意識にぎゅっと強くにぎりしめてしまった手を壁に叩きつけようとした時。
「太一?」
後ろから声をかけられて、太一は片手を上に挙げた状態でピタリと止まる。こんな状態の自分を1番見せたくない人物に見つかってしまった。胸に苦いものが込み上げながら、太一はくるりと後ろを振り返った。
「…空」
「お帰りなさい、太一」
ふんわりとした笑顔を太一に向けて、空はこちらに近付いて来る。まるで"あの頃"みたいに無垢な笑顔を浮かべる空に、太一はズクリと胸が痛んだ。
それでもそんなことは微塵にも表情に出さず、太一はいつものように笑ってみせるのだった。
「おー。やぁー、全く参ったぜぇ?今回の敵(やっこ)さん、やたらしつこくってさぁ」
ニヒヒと茶目っ気たっぷりに笑う太一に空も小さく笑みを零す。
「そうなの?それじゃ怪我とかは?」
「してない!」
見ろ、このとーり、とばかりに太一は両腕を挙げてみせた。その太一の様子に空は安堵して深く息をつく。
「そう。良かった…」
それを見た太一の胸にまた鈍い痛みが走った。しかし悲鳴を上げる自身の胸を知らない振りで通して、「大袈裟だなぁ」と苦笑を作ってみせる。そんな余裕まであって。
なのに。この場所から即座に逃げ出したくなるのを押さえ付けることは出来なかった。
結局太一は簡単に空に別れを告げると自室への道を急ぐのだった。その様子を痛いような表情で空が見送っていることなど知るよしもなく―――――。


 * * *


自室に帰り着いて、勢いよく開けたドアを身体を倒すことで閉める。
そしてそのまま、ずるずるとその場に崩れ落ちる形で座り込んで。
なんだか無性に泣きたくなって、太一は虚ろな表情のまま組まれた腕の間に顔を埋めた。部屋の中でまで気丈に振る舞うだけの気力はもう太一には残ってなどいなかった。

覚悟はあった。
血に塗れても、前だけ向いていくだけの覚悟は。
しかし、
「アイツ等は巻き込みたく、なかっ…た」
今の自分達は決して人に誇れるような生き方をしていない。それを強要してしまったのは、他でもない自分と自分の家族で。自分はいいのだ。
これは家族を―ヒカリを―取り戻すための唯一の手段だから。

だからその分。
「アイツ等には綺麗なままで居てほしかったんだ」
"自分とは違う"幸せな人生を歩んで欲しかったのに。ゴメンなどとは謝れない。もう歯車は既に回り始めてしまった後なのだ。過ぎた時間は決して戻らない。血に塗れるのは自分だけでよかったのに。

つぅ、と頬を流れる涙がズボンに染みを作って、そして広がっていく。とその時、頭に固い何かがそっと触れた。
「たいちー」
心配そうに掛けられた声に心の箍が外れ、気持ちが溢れて止まらない。太一は目の前のオレンジ色を強く抱き込んで、泣き崩れた。
「アグモン…」
もうすこしこのままでいてくれ。

涙混じりで聞き取りにくい言葉だったが、アグモンはこくんと頷いて、太一の背に腕を回す。そして震えるその背を何回も何回も優しく摩るのだった。

「ずっと、ずっとそばにいるよ。たいち」

僕は君を守りたいから。









第2話。空とアグモン登場。あっ、言い忘れてましたけど、この連載は軽いNLがあるので、NL好きじゃない方は要注意です。



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Category : カルマ
Posted by 春乃 綺 on  | 4 comments  0 trackback

-4 Comments

[i:63734] says...""
早く続きがみたいです
2010.01.25 19:48 | URL | #- [edit]
秋月 says...""
わぁぁあ!! 感想ありがとうございますヽ(o´д`o)ノ。o.゚。*
しかし続きは少々お待ちくださいませ(汗)
リアルに書いたとおり、絶賛スランプ中ゆえorz
あ、ネタばれると、次はいきなりの過去編です(←)
2010.01.28 20:28 | URL | #- [edit]
[i:63734] says...""
そうなんですか
楽しみです
2010.01.29 19:31 | URL | #- [edit]
秋月 says..."Re:"
お待たせいたしました。
3話、上げましたので宜しければどうぞ(*´∀`人
2010.02.01 21:20 | URL | #- [edit]

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