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ぼくとも。 |

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Posted by 春乃 綺 on  | 

カルマ 1話

曇りのない月が寝静まったダイバの街を照らす。
今はもう渇いた空気に覆われたその街は決して住みやすい場所ではなかった。
今宵もまたどこからか銃声の音が聞こえる。












暗いコンクリートの中を走る一つの影があった。
その影は後ろを気にしながら、自分の目の前に広がる長い廊下を見て、小さく舌打ちをする。
失敗したな。
舌打ちと同時に彼―太一はそう思った。
もう少し隠れやすい場所があれば、追っ手の目から上手く逃れられるのだが、生憎今太一がいるのは建物と建物を繋ぐ、渡り廊下。しかも数十メートルは高さがあるところで。
飛び降りれば、ヘチャンコに潰れること間違いなしな厄介な場所だった。
「くっそ、」
ため息混じりにこれからどうしたものか、と思案したところで、パァンと太一の背後数メートル内で銃弾が放たれた。
それを太一は背を向けたまま、持ち前の反射神経で交わす。その結果、弾は太一には当たらずにすぐ後ろにあった柱に数発めり込んだ。
そしてヒュッと少し空気を吸ったと同時に、太一は振り向き様に右手に持っていた拳銃のトリガーを引いた。
渇いた音を響かせて、その銃弾は太一を狙った者の銃口の左下をかすって、そのまま彼の拳銃を弾き上げた。
「くそ、化け物が…」
太一の神業ともいえる、その行為を受けて、相手の彼が低く呻くのを。太一は口許を軽く上げて、壮絶に笑った。


* * *


そんな一種の死線を繰り広げた後、太一は相手の右足を銃で撃ち抜いた。
そして相手が動きを止めたのを見計らって、脱兎の如く逃げ出す。

出来れば傷付けたくなかったが、そんな甘いことは言っていられない。銃を一つ失ったとはいえ、相手が武器を持っていないとは限らないからだ。それでも胸を撃ち抜くのに躊躇いがあったのは太一の甘さだった。
今宵はターゲットであった男を一人殺していた。その後に、また人を殺してしまうのはどうしても避けたかったのだ。
そう考えてから、殺し屋としては間違った考えだな、と太一は自分に苦笑した。
階段をいくつか下り、地上ももう間近という時に太一は釈然としない何かを感じた。
どうして敵があの時の彼しかいないのだ。
自分が撃ち殺したのは、あるグループの頭だったはずだ。そう簡単に逃がしてくれるはずがないのに。途端に頭の中で警報が鳴り、来た道を戻ろうとした。
その時だった。
後方から数発の銃声が響く。咄嗟に横に跳んだ太一はしゃがみ込んで銃声がした方に銃口を向ける。そこにはざっと五人弱の敵の姿があった。前方からもいくつかの人影が走ってくるのが見えて。敵に囲まれ、人から見れば"絶対絶命"というものに陥って。
この時彼等の狙いに気付いた太一はクッと笑いをもらした。

舐められたものだな。
俺がそれで仕留められるとでも?

不敵な笑みを浮かべて、太一は敵を流し見る。銃を構えたまま、彼等はぴくりとも動かない。
ここで俺を撃っていれば、もしかしたら俺を殺せたかもな。
そう考えて太一は一人小さく笑う。

「八神、太一」
後方にいた敵が低い声で太一の名を呼んだ。
「死んでもらうぞ」
唸るような強い口調で敵が言うのを太一は口許に笑みを浮かべたまま聞く。そしてその後、
「悪いが」
上着のジャケットに手を突っ込んだ。敵は突然動いた太一に銃口を向け、トリガーを引こうとした。しかし太一が懐から取り出したものを見て、それを止めざるを得なくなる。太一の手の中の灰色の光沢が月の光で怪しく光った。
「それは御免被るね」
そう言うと太一はそれ、手榴弾のピンを引き抜く。そして手榴弾を前方と後方の両方向へそれぞれ二つずつ投げた。
「馬鹿なっ!死ぬ気か!?」
途端に敵が色めき立ち、後ろに後退し出す。
太一は始終口許に笑みを作ったままだった。


 * * *


「退避しろー!!」
敵がバラバラと散って行くのを横目にとらえ、太一は目の前にあった窓を数発銃弾で撃ち抜いた。そして脆くなった窓ガラスを拳で粉々に砕いて、そこから飛び降りた。それと同時に合計四つの手榴弾が建物内で大爆発を引き起こす。
無事窓の外に逃れた太一を次に待ち構えていたのはいくつかの銃口とナイフだった。
案の定、外にもいやがったな。
軽やかに舌打ちし、太一は敵を空中で何人か仕留め(仕留めると言っても殺してはいないが)、弾切れの銃を素早くリロードする。スライドを引き、弾をセットすると同時に地面に着地。そして小さく息を吐き、後ろから自分目掛けて走ってくる銃弾を打ち落とした。
鮮やかな太一の手腕に敵が呆気に取られているうちに、敵数人を後ろから回りこんで、地に沈めて行く。その間僅か、十数秒の出来事だった。恐るべき身体能力に太一自身呆れ、深く溜息をつく。
「結局一人でどうにかなっちまったし…」
ふて腐れ気味にそうぼやいて、太一は耳元のインカムのスイッチを入れる。そうするとインカムからまだ幼さの残る司令塔の声が聞こえて来た。
「お疲れ様です。ターゲットはどうなりました?」
「ちゃんと殺ったよ」
銃でトントンと肩を叩きながら太一はそう言い、小さく伸びをした。
なんだか今日は疲れた。
手強くはなかったけれど、しつこかったから。
太一がふぅと息を吐くと、インカムの向こうの彼がクスクスと笑った。
「そうですか。無事でなによりです、太一さん」
親しい者からの心からの労りに太一は自然に口許を緩めていた。今までの疲れもなんのその、明るい口調で晴々と
「おぅ! んじゃ今から帰還すっぜ」
と言った太一に、
「騒がない方がいいのでは?まだ敵もいるかもしれませんし…」
と司令塔、もとい光子郎は苦笑するのだった。




提供:リライト




すいませんっ…!大変、大変遅くなりました(汗)。
この小説は私が前サイトで連載していたものです。ここでも引き続き、連載しますんで、どうぞよろしゅう。


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Category : カルマ
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