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ぼくとも。 |

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Posted by 春乃 綺 on  | 

Love is being stupid together.(光ミミ)


無神経で、情緒なくて、女の気持ちなんてこれっぽっちも分かってないくせに、
私は昨日より今日、今日より明日ともっともっと光子郎くんのことが好きになる。

―――こんなに夢中にさせて、いったい私をどうするつもり?








Love is being stupid together. 1





おもしろくない。
心底、文字通り心の底から、おもしろくないっ!


「泉くん、ここってこれで答え、合ってる?」
「どこですか?―――あぁ、そこは…」

「泉くんに薦められたこの本、昨日読んだよ。解釈が新鮮でおもしろかった」
「そうですか。その本が好きなら、同じ作者の○○っていうのも面白いですよ」
「そうなの?今度、読んでみるね」


「~~~なによ、光子郎君の馬鹿っ。私にはあんな風に話したことないくせにっ!」
楽しそうにしちゃってさ、とぶー垂れた顔で、ミミは低く呟きながら恨めしげに彼らを睨んだ。
楽しげに話に花を咲かせる彼らのうち、ひとりはミミの最愛の彼氏―泉光子郎、もうひとりはこのクラスの学級委員長―倉敷ゆりである。

最近、光子郎と委員長は休み時間などに談笑することが増えて、密かに噂に上がったりしていた。いわく、「あの二人、最近仲良くね?実は付き合ってんじゃないの?」と。
光子郎と付き合っているのは本当はミミなのだが、光子郎が公にしたくない(=ミミは目立つので絶対下世話な話のタネにされるから)という理由で渋々これまで隠してきたのだが。

(私と付き合ってるって知られるのは嫌なくせに、自分が他の人と付き合っているって噂されるのはいいわけ!?)

光子郎には、委員長と図書館で意気投合したと聞いてはいた。なんでも委員長は隠れパソコンオタクであったらしく、最近のパソコンの性能について熱弁をふるい合ったのが、そもそもの発端らしい。
そう聞いてはいたけれど、ミミの不満は募り積もっていく。
さも仲がよさそうに、二人だけしか入り込めない空気を作られるたびに、ミミはギリギリと歯軋りせんばかりに悔しがった。

―――光子郎の隣(そこ)は本当は私の場所なのに、と。

唇を噛み締め涙目のミミを見かねて、ミミと光子郎の実情を知る隣のター子(本名:桜井貴子)は苦笑した。

「ミミ、顔、いくらなんでもその顔はヤバいわ」
「たーこぉぉ…だってぇぇ…」
「心配しなくても、泉なんて誰もとらないって」
「じゃあ、委員長はなんなのよぉぉぉ…」
「えー…ただの友達なんじゃないの?」
「友達…?」

友達ってあんなに仲良いものなの?というか、男女の友情って成り立つの?、と矢継ぎ早に質問を繰り返すミミを、貴子は呆れ顔でどうどうと宥めた。

「そりゃ、ミミみたいのとは男女の友情は成り立たないのかもしれないけどさぁ」
「なにそれ、どーゆー意味よぉ!」
「そーゆー意味よ。つか、そんなに気になるなら、本人に訊いてみればいいじゃん。―――『浮気?』って」
「――友達との仲も認められない心狭い女だって思われたくないからイヤ」
「ミミ、実際、嫉妬深いのに?」

いまさらじゃん、と貴子は首を振った。つーか、泉相手にそんなに心配にならんでも大丈夫だってというのが、彼女の本音である。
むしろ心配しなくちゃいけないのは、本来なら光子郎の方なのだ。ミミは自他共に認める、クラス―さらには学年で知られる美少女で、公然と、または密かに、惹かれている男子も多く、それゆえに彼女に近づく輩も多い。
貴子のミミみたいのとは男女の友情は成り立たないというのは、ミミのモテッぷりによるものだ。ミミの男友達は多いが、蓋を開ければどいつもこいつもミミに下心を持っている輩ばかりで純粋な友情とは言えない。ミミもそこらへんを熟知しているので、彼女から積極的に男友達を作ろうとはしていない。
それなのに、本来ミミ相手にハラハラするはずの光子郎が飄々としていて、モテモテであるミミが今光子郎相手にギリギリと焦れているなんて、

「(変なカップルよね…)」

貴子はミミを宥める顔の下で呟いた。


* * *


ミミも行動しなかったわけじゃない。
学校で二人の関係を秘密していても、全く話さない訳じゃない。
それに小学校からの幼馴染だとは公表していたから、たまになら平気だと光子郎を言い包めて、一緒に帰ることもあった。

<光子郎くん、今日一緒に帰ろ>

授業中、机の下で光子郎にそうメールした。わざわざ授業中にメールをしたのは、休み中だとあまり長い間メールしていると誰としているのかと気にする人が、何人かは必ずいるからだ。
無粋だとは思うけれど、人懐っこいミミの性格がそういう無粋なことでも訊きやすい雰囲気を醸し出しているのかもしれない。ミミはこういうときばかりは損な己の性格に嘆息した。
と、その時、手に持った携帯のショーウィンドウがチカチカと点滅した。ミミはいそいそと携帯を開いて、新しく来たメールを開く。いわずもがな、送信者はミミのお目当ての彼だ。

<すみません、今日、部活です>

いつもながら、つれない光子郎の態度に肩を落としたが、ここで引き下がってなるものかとミミは勢い勇んで返信を送った。

<待ってる>

光子郎からの返事は間もなく来た。

<今日は部活終わるの、六時すぎですし、多分僕は七時過ぎるので、先に帰って下さい>

ミミはその柳眉を顰めて、携帯のディスプレイを睨めつけた。
また、この断り文句なのか。これで断られるのは通算3回目だった。

<私はその時間でも大丈夫だもん。だから待ってるって言ったら、待ってる!>

そうは送ったものの、ミミにはこの後の展開も容易く予想できた。どうせ、ならば誰か他の人を迎えに寄越しますって言うのだ。

<なら、太一さんにミミさんの迎えを頼みます>

光子郎から新たに来たメールに、ほら、やっぱり、とミミはいっそ悲しくなった。そこまで私と帰りたくないのか、と。
別に外で待ってるわけじゃないんだから、七時くらいなら大丈夫なのに、なんでそう頑ななのか、ミミにはそれが分らなかった。まるで、見られたくないものであるみたいに――。

(……まさか)

ミミの脳裏に浮かんだのは、ゆりと密会している光子郎の姿だった。
彼女と逢ってるの、とメール画面に途中まで打ち掛けて、慌ててその文を消した。心の中が黒くドロドロしていく。
光子郎に限ってそんなわけないと考えるけれど、それが徐々にドロドロしたものに呑まれていった。
女子とあんなに話している彼をミミは知らない。余程、趣味が合うのか、気が合うのか、それとも元から相性自体がいいのか。
それって私より?と思い至ったところで、完全に黒に呑まれた。

(――光子郎の浮気者)

内心で低く呟いたその言葉をそのままメールに打ち込んで、ミミはそれっきり携帯を閉じた。
やがてそのメールを受け取った彼が、画面を見て目を見開いた後、パッと顔を上げた。そして訝しげな視線をミミに向け、

――ミミさん…?

声を出さずに彼が確かにそう言ったのを、ミミは目の端で見悟った。


* * *


「ター子、帰ろ」
「いいけど…、ミミ、泉はいいの?」
「いーの」

ツンとしてそう告げたミミを見て、貴子はアイツ一体何したのよと帰り支度をする光子郎に視線を投げた。
あのメールの後、光子郎は珍しいくらいミミに話しかけ、最後のメールの詳細について尋ねようとした。が、ミミの方も珍しく光子郎に冷たい態度で、彼の方を一瞥した後、一貫してツーンとしていて全く取り合おうとしなかったのだ。
それを何度か繰り返し、付き合いの長さで今日はもう駄目だと諦めたのか、その後は疲れたようにミミを見つめるだけに留めている。
アイツ、賢いのか、馬鹿なのか、時々分かんなくなるわ、と貴子は呆れ果てて物も言えなくなった。
勉強面や他に才を見ないパソコンの知識だけで見るなら間違いなく賢い部類に入るけれど、人の機微に疎いところや無神経にモノを言うところを見ると、実は馬鹿なんじゃないかと思えてならないのだ。
ますます貴子にはミミが光子郎のどこがそんなにいいのか理解らなくなった。

と半ば愚痴っている間も貴子が呆れ眼で光子郎を見やっていると、支度が終わったのだろう、彼は鞄を持って席から立つ。
そこへミミを悩ませる件の人物が光子郎に「また明日」と挨拶し、彼もそれに返した。
そのやりとりで隣のミミの負のオーラが増したのを肌で感じ、貴子はいっそ洗い浚い光子郎にぶっちゃけてやりたくなった。
そもそも、当人のひとりが、状況を分かっていないからこうなるのだ。ミミが何故こうも不機嫌なのか分かれば、少しは泉も行動を改めるだろうに。

「(もう今、言ってやろうかしら)」

二人(というより光子郎)が本来の関係を隠しているのを無視して、この場で全てを言ってやりたくなり、実際、喉まで言葉が出かかった。
生憎、ミミに了解をとってないけれど、もうこの際バラしてしまってもいいだろう。ごめんねと心でミミに謝りながら、隣の彼女を垣間見て。次の瞬間、出かかった言葉は喉の奥にそのまま呑みこまれてしまった。

「え、ちょ、ミミ!?」
貴子は仰天した。なぜなら、隣のミミはボロボロと大粒の涙を零しながら泣いていたからだ。
ヒッヒッとしゃくり上げながら、ミミは戦慄(わなな)く唇を噛み締め。
それでも瞳は鋭く一点のみを睨んでいた。
やがて彼女はふっくらした桃色の唇をガバリと開き、勘弁ならなくなって大声で叫んだのだった。


「光子郎くんのっっ、うわきもの―――!!!!」


叫んだっきり、ミミはしゃがみ込んでわんわんと大声で泣き始めた。泣きながら、ミミは「馬鹿」だの「唐変木」だの言い連ね、ひたすら光子郎を詰(なじ)っている。
――周囲は唖然の一言だった。
ミミが泣きじゃくっているのも、その直前の彼女の言葉も、何もかもが想定外すぎて、教室内はミミの泣き声以外、水を打ったように静まり返っていた。
彼女を遠巻きにしながら、クラスにいる人間は皆、視線で「どうする?」「いや、どうもこうも…」と会話し合い。
そこへミミが泣きだす直前、教室の戸口から出ようとしていた光子郎が、戻って来て人と人の間からひょっこりと顔を出したのだ。
あ、と彼の顔を見た人間は当事者の登場に何も言わず道をあけた。

「ミミさん」
うまい具合に空いた人の合間を縫って、ミミの前まで辿り着いた光子郎は、彼女の前に片膝をついて、彼女の名前を呼んだ。
そのかつてないほど優しい光子郎の声音に聞き留めた人間はギョッとし。
光子郎は俯いて泣きじゃくるミミの頬に手をあて上を向かせると、彼女の顔を覗き込みやんわりと目を細めた。

「ミミさん、泣かないでください」
「こーしろー君……」

光子郎が現れて、ミミは泣き顔をぐしゃりと歪ませた。ヒックと大きくしゃくりあげ、「こーしろーのバカぁぁ!」と甲高い声で叫んだかと思ったら、目の前の光子郎の胸板を両手で強く叩き。
そのまま彼女は光子郎の首筋に顔を埋め、なおもしゃくり上げていた。
光子郎は小さく嘆息し、己の首筋にある頭をゆっくりと撫でる。

「相変わらず、君は泣き虫ですね」
「……光子郎くんのせいだもん」
「はいはい」

軽く肩を竦めて、光子郎は「とりあえず場所、移しましょうか」とミミを立つように促す。しかし、ミミはそのままの体勢にまま、光子郎にしがみ付いた。
ちょっとミミさん、と光子郎がミミの細い肩を掴んで引きはがそうとしたが、ミミは頑として彼の背中の服を掴んで離さなかった。
そして、抱きついたまま、ミミはテヘッと愛らしく笑う。

「なんか、力ぬけちゃって立てない。光子郎くん、運んで?」
「ミミさん…」
「お願い、ねー、光子郎くーん」
「君って調子いいですよね…」

深ーく溜息をついて、光子郎は「仕方ないですね」と諦め顔でミミを抱きあげた。所謂、姫抱き、お姫様抱っこである。
その瞬間、教室内はもう阿鼻叫喚。それまでもなんだか二人の雰囲気にあわあわしていたクラスメートたちは、初めてみたお姫様抱っこに悲鳴と歓声を上げた。
ちなみに悲鳴を上げたのはミミのファンの男子で、歓声を上げたのはクラスの大多数の女子である。
そんな囃したてる野次馬たちを気にも留めず、光子郎はミミに荷物の所在を訊いた。

「ミミさん、荷物どこですか。今日はもうこのまま教室出ましょう」
「分かったー。んーと、荷物は…」
「はい、これ」

ミミが自身の机に目をやる前に、貴子が光子郎にミミの荷物を手渡した。そして、真っ黒い笑顔を光子郎に向ける。案の定、目が笑っていなかった。

「これ以上、ミミ泣かせたら許さないからね」
「……肝に銘じておきます」

渋い顔で了解し、貴子に軽く頭を下げて、光子郎は踵を返した。そうして、教室の戸口までの人と人の僅かな合間を歩いていく。

「ちゃんと掴まっていてくださいね」
「うん」

光子郎の言に、彼女も大人しく――というには語弊があるキラッキラした満面の笑みで彼の首に掴まった。実に幸せそうな友人の姿に、貴子も脂を下げた。
戸口に向かう間にも、彼らは「ミミさん、なんか重くなったんじゃないですか…?」「失礼しちゃうわね―!!光子郎くんの馬鹿!無神経男!」「はいはい、それはすみませんでした」とそれはもう和気藹々と痴話喧嘩を繰り広げていた。
そうしてまもなくし、教室の戸口に辿り着いた二人は、くるりと振り返り、

「それじゃ、お先失礼します」
「じゃね、みんな!」

とにこやかに去っていったのだった。
残されたクラスメートたち。彼らは皆一様にブルブルと震えていたが、机を勢いよく叩く者、床や壁を力の限り殴る者、口元を覆う者と、行動は様々だ。
ややあって、クラスメートたちは一斉にガバッと口を開き、心のままに叫んだ、

「バ カ ッ プ ル か !!!!」

――――と。




「くっそ!!なんなんだ、あいつら、なんなんだ、あいつら!!!」
「雰囲気が甘過ぎて、砂吐くかと思ったわ!!」
「もう付き合ってますよね!!つか、付き合ってなくちゃなんなの!!」
「凄いもん、見たわぁー」
「明日朝一で、尋問決定だなー」
「よし、今から質問内容考えようぜ」
「さんせーい」
「それどころじゃねぇよ…。くそぅぅ、太刀川が…俺の太刀川が…!!」
「お前のじゃねぇよ、俺のだ」
「お前のでもねぇよ、死ね」
「というか、あれ、だれ?泉君の皮を被った誰か?」
「案外、そうかもしれないね…。それか、気がふれた泉君か、ネジが数本外れた泉君」
「どっちにしろ、正気じゃないのかよ」
「ネジを数本とっただけで、アレになるのか…。恐ろしいな…」
「部品って…大事だよね…」
「そうだな…」


もう帰宅どころではなかった彼らの口論は、それから数時間続いた。









(つづく)


ポール・ヴァレリー、恋の格言より。

私はこんなカップルを目の前で見たら、「ちっくしょう!リア充、末永く爆発しろ!!」と叫ぶと思う。




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