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ぼくとも。 |

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Posted by 春乃 綺 on  | 

王子様とお姫様と狼と(ギャリイヴ)



◆注意書き
以下、
ギャリイヴがベロチューしてます。
・そこはかとなくエロい…?所詮、私が書くものだけど、保険のためにR15指定かけておきます。
・ほぼ一発書き。自分の書いたラブシーン(失笑)とか読み直す気が起きなかった。
・ギャリーさんがロリコン(このときイヴ14歳)、イヴが痴女っぽい。ギャリーさんはイケオネェなんだよ!イヴは天使なんだよ!という方はご遠慮下さい。
・あとイヴギャリイヴです。前半がイヴギャリーで後半がギャリイヴですかね?
・ギャリーさんの理性がぷっつんしたら、どうなるかを書いた小説でもある。ただし、このときイヴはまだ14歳なので、「包囲網、展開中!」とは別未来のものです。
・どんなものを出されても、ムシャウマァと召しあがれる方のみご覧ください。



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包囲網、展開中!(ギャリイヴ)


◆注意書き
・ギャリイヴ+メアリー+イヴ家族小説です。なのに、ギャリーがちっとも出てこない小説です。
 言いたいことは分かる。だから、石を投げないでくださorz
・3人捏造エンドですので、イヴの家にフツーにメアリーが家族として混ざっています。ちなみに妹設定です。
・イヴのご両親とギャリーさんは面識あり。
・イヴさんが男前。というか、あざとい(←)。
・メアリーまじメアリー

以上のことが耐えられない方は回れ右をよろしくね☆←






イヴの家の夕食の場は家柄からか、たいてい粛々とした厳かな空気が漂っていることが多い。ただここ最近のことに限っていれば、とある事情からメアリーの小言とイヴの熱弁が繰り広げているため、非常に賑やかだった。
さて、ではそのとある事情とは何かというと、―――そもそも発端はイヴが16歳の誕生日を迎えたことにあった。


「私、ようやく結婚できる歳になったよ。もう結婚していいよね?――ギャリーと」

娘のこんな爆弾発言に、母は「そうねぇ…」と言うばかりで止める様子は疎か、焦る様子もない。実にのほほんとしたものであった。父の方も「うーん…」と唸り、若干渋い顔をしながらも焦る様子はなく。
というのも、娘が既に数年前から「私、ギャリーをお嫁さんにするの」と素晴らしく愛くるしい笑顔で言い続けてきたことから、両親も現段階ではもう慣れたものなのである。ちなみに言及すると、イヴはあくまでもギャリーを婿ではなく嫁にもらいたいらしい。彼女に何がそう掻き立てるのか、『私がギャリーを幸せにするの(にっこり)』とはイヴの数年来の野望である。

「私はギャリーさんなら大賛成だけど、結婚後はどうするの?貴方はまだ学校あるし、しばらく孫は期待できないかしら」
娘の真顔での言に、イヴの母は一旦口許を布巾で拭って、食事の手を止めた。彼女の頭の中には結婚式で感極まって泣く己の姿や娘の子供を抱いてあやしている己の姿が如実に想像できてしまっていた。それはもう明瞭に。なので、考えるべきは結婚するか云々より結婚した後のことだった。
そんな彼女の隣で、イヴの父も肉厚のハンバーグに入れていたナイフの手を止め、
「こ、子供…?それはまだ早いんじゃないかなぁ…?学生だし、というかそもそもまだ結婚もしていないのに…」
と口許を引き攣らせて言う。
彼の頭の中でも、娘の結婚式の前夜に泣きながら酒を煽る己の姿や初孫に相好を崩す己の姿が脳裏に浮かんできていた。
彼は実のところ、内心では娘の結婚を渋る気持ちもあるし、大事な娘を男に奪われる式典(=結婚式)など正直出席したくなかったりする。それでも娘の結婚を反対しないのは、イヴの決意がとてつもなく固いこと(以前、娘にお見合い話を持ち掛けたら絶対零度の視線を向けられ、見合い写真をビリビリに破り捨てられた。あれは自分の妻が一度だけ本気で『実家に帰らせていただきます』と言ったときの目とよく似ていた)、さらに数年前からギャリーとの結婚の可能性を娘自身に叩きつけられてきたからだった。
まぁ、つまるところ娘の結婚については、既に諦めて久しいのである。娘も妻同様、一度心に決めたら、決して曲げない上に、色々と手強いと彼は身を以て知っていたから。幸い、ギャリーは彼の中で一応合格の範囲内ではあったので(もちろん知り合いにもっと高物件な相手もいたが。…いつかの見合い相手とか)、素直に結婚を許したのだ。
でなきゃ、頑固な娘のことだ、駆け落ちもやむなしという極論に達し、なおかつそれを実行しそうだ。父である彼はその起こり得る未来を想像し、気持ちがドン底にまで沈んだ。……大手を振ってこの家から出て行く娘が見えるようだ。
ちなみに娘の想い人であるギャリーに娘の暴走を止めてもらおうにも、彼は基本的に娘に甘くかつ暴走の被害に遭っているのも主に彼なので、阻止の期待はできない。ならば、いっそ快諾して、娘の暴走を止めることにしようと早い段階で苦渋の決断をした自分の判断は間違っていなかったと彼は今も思っている。

でも子供は早いだろう、子供は。

そんな考えの苦い顔の父を見て、イヴはしゅんと萎れながら呟く。

「…でも、私、早くギャリーに子供あげたいの。7年も待ってもらっちゃったし…」
「あぁ、そうよね。7年は長いわよねぇ…。まぁ、でも授かりものだからね。できちゃったらできちゃったでその時よ」

あっけらかんとした母の様子に父はたらりと冷や汗を流しながら、あまりパンチのない、待ったの言葉を言い募る。

「いや、でも、しかしな? パパは普通に高校は卒業してほしいんだけど…いや、できれば大学も…」
「あら貴方ったら。そうしたら、昼間の間だけ私が預かるっていう手もあるし。そんな深刻にならなくても大丈夫よ~」
「いや、そうは言ってもなぁ…」


「―――てゆーかさぁ」


母と父の言い合いが母の押し切りで終わろうとしたとき、それまで黙ってハンバーグをパクついていたメアリーが呆れ口調で口を挟んできた。

「そもそもイヴとギャリーって付き合ってもないじゃん。それがいきなり結婚なんて、現実感なさすぎ」

ハンッと鼻で笑ったメアリーに怒るでもなく、今日一番の難し気な顔をして、イヴは頷いた。

「そう。今、一番の難点はなかなかギャリーが結婚に同意してくれないことなのよね」
「え、いきなり結婚迫ってるの?お付き合いじゃなくて」
「去年までは“お付き合い”だった」
「それ、結婚前提のお付き合いでしょ」

そんなもん、あのヘタレワカメが了承するわけないじゃん、とメアリーは毒づく。

今日もメアリーのギャリーに対する毒舌は絶好調のようだ。
そこにイヴの母も話に参入してくる。

「あら、イヴ。あなた、まだギャリーさんに了承もらってないの?ダメじゃない。ギャリーさん、いまや売れっ子デザイナーだから、きっとモテるわよ?」

早いとこ首輪つけとかないと、と言うイヴの母の顔は満面の笑みだ。
そういう彼女も数十年前、当時社交界で密かに話題だった若き青年政治家に、早々と首輪をかけた女傑だったのだが、その気性は未だ変わらないらしい。女神のごとく綺麗な微笑から何処か漂う黒さに、あの時捕獲された元青年政治家もとい彼女の現夫は思わず腰を引いた。

基本的に女が強いこの家。イヴとメアリーも着実に強くしたたかに成長しつつあった。その被害を受けているのは主に父とギャリーだ。
しかしこの一点だけはと、ギャリーは交際・結婚については頑なに拒んでいた。それは別にイヴが嫌いなわけでなく、まだ現段階ではギャリーの中ではイヴは可愛いお嬢ちゃんという感じで恋愛対象には入っていないからだった。
イヴが恋愛対象に入る―――つまりイヴを女だと理解し、そういう色っぽい情が彼の中で芽生えるのは、まだ数年先のことだが、それは今は割愛しておく。

『イヴは可愛いわね、大好きよ』と妹に向けるような感情でいつもはぐらかされてばかりのイヴは、母の言葉で嫌なことを思い出したのか、不貞腐れた表情でぼそぼそと呟く。

「ギャリー、私にはもっといい人がいるからってさ。私とギャリーじゃ、歳が違いすぎるし、イヴに自分はもったいないって、頷いてくれない」

ぶくすれた顔のイヴを、メアリーは頬杖をつきながら、さもありなんと言いたげな顔で見やる。

「断るテンプレの台詞よね、それ。もう、いっそ諦めたら?あいつの言う通り、イヴにはもっといい相手がいるわよ、絶対」
「あらぁ、ギャリーさん、いいお相手じゃない。優しいし、気遣いできるし、家事全般得意だし」
「…ママ、それ、女々しいっていうのよ。男らしさがまるでないじゃん。だいたいさぁ、なんで寄りによってギャリー?もっといいの、周りにいるでしょ、いっぱい。だって、オネェ口調の怖がりだよ、あいつ」
私なら絶対イヤー、とメアリーはほとほとイヴが理解できないといったように肩を竦めた。父も口には出さないが、唯一ギャリー絡みのイヴに真っ向から立ち向かえるメアリーにエールを送っている。そこまでギャリーでなくてはならない理由が彼らには分からなかった。いや、メアリーは単にギャリーが気に食わないというのもあったが。何が彼女をここまで思わせるのかと半ば恐々としながら、父は娘の返事を待つ。

―――――そして、彼女の口から飛び出したのはある意味予想通りで、別の意味では予想だにしない言葉だった。

「ギャリーじゃなくちゃ、結婚しても意味がないもの。むしろ、ギャリーが相手じゃなかったら、こんな長年想い続けないし、結婚に焦ったりもしないわ」

全部相手がギャリーだから、と真剣な顔で言い切るイヴに、父は絶句、母は「ギャリーさん、愛されてるわねぇ」と微笑み、メアリーはケッと顔を歪めて毒づく。
イヴの妹の頭の中では姉の最愛の人がパレットナイフで滅多刺しにされているが、それでもメアリーに決意の固い姉を止める術はない。メアリーは大好きな姉の一番が昔からいつもギャリーであることが悔しくて堪らなかった。そして姉の一番の座は近々永遠に彼のものになるだろう。―――気に食わない、とメアリーは歯噛みするが、どうしようもない。だから腹いせに次にギャリーと会ったとき、目一杯いじめてやろうと心に決めるメアリー。
一方、言葉が出ず絶句した父はいよいよ祝福の鐘が聞こえてきそうだと内心泣き濡れていた。前々から覚悟はしてきたけれど、いささか早すぎないだろうか。まだ16になったばかりなのに、もう嫁に出すとか。一言、ギャリーに物申したいが、そもそも彼はこの結婚を了承していないから、見当違いもいいところ。では、責められるべきは誰だ。娘か?いや、しかし、そもそも娘を娶って欲しくないのに、娘を責めるというのも本末転倒な気がするのだが、気のせいだろうか。……とりあえず、ギャリー君とは一度じっくり話し合う必要がありそうだ。せめて、子供はあと数年待ってもらうようにしなくては。そんなことを半分魂が出そうになりながら、ぶつぶつとボヤく父。

そんな彼らを余所に、母とイヴは幸せな結婚に漕ぎつけるにはどうしたらいいかを楽しげに和気藹々と話し合うのだった。







包囲網、展開中!
(貴方が頷いてくれたら、一週間後にはすぐ挙式ね!)





イヴちゃんが虎視眈々とギャリーさんとの結婚を狙う話。

以下、他愛もない補足という名の吐き貯め▽
※ちなみにギャリー氏は自分がイヴ宅でイヴの結婚相手としてみられていることをしらない。
※さらにイヴに嫁扱いされてることもしらない。ちなみになぜ婿でなく嫁かというと、オネェ口調のギャリーは男役じゃなくてホントは女役がやりたいんだと予想→ギャリーのためなら私、男役頑張るね!という結論に至った。そして、結婚を了承したギャリーと話し合った結果、誤解が判明し、「私がお嫁さんでいいんだね、わかった!」となる。イヴはギャリーのためならっ!で、色々と己の常識を覆す子。
※あ、結婚はちゃんとギャリーさんがイヴちゃんに恋愛感情抱いてからになるので、数年後設定です。(いや、今も無意識下では抱いてるんだけどね。ギャリーさんが認めようとしないだけで)それまでにギャリーさんはイヴちゃんに寝込み襲われたり、色仕掛けされたり、「好き、愛してる」を耳元で繰り返し囁かれたりと、まぁ色々され、理性がぷっつんしそうになります。

このままいくと、イヴさん、ギャリーさん押し倒しそうだよねと思って、
ギャリイヴの濃ぃいベロチュー小説書いた私は自重した方がいい(←)。






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あなた限定のわたし(ギャリ+イヴ)


※ハマった勢いでIb小説を執筆。
以下、限りなくギャリイヴに近いギャリー+イヴです。




『イヴはいい子ね』
 言われるたびに誇らしかったその言葉は、いつしか少女に重い枷をはめていった。
 その枷を取り払ったのは―――。


◇◆◇

「それじゃ、イヴ。パパとママ、夜あなたが寝る前までには帰ってくるから、お留守番お願いね」
「うん、いってらっしゃい」
イヴはそう言って、笑顔で手を振り、両親を玄関先で見送った。

今日は父方の遠い親戚の法事があるとかで、イヴの両親は以前から隣町のお屋敷まで行くことになっていた。イヴはまだ小さいから邪魔になるという理由で、ひとりこの屋敷に残ることになり。
イヴをひとり家に残すことを心配した両親から、だれか大人の人に自分らの留守を頼もうかという話も出たが、もう10歳になるのだから大丈夫だとイヴは両親に笑ってみせた。その留守を頼む大人の候補にギャリーの名前もあったから、イヴは彼に迷惑をかけないよう、余計ひとりで大丈夫なように振る舞ったというのもある。
両親は自分たちの他にイヴが一番懐いているのがギャリーだと分かっているから、彼に留守を頼む気でいたのだろう。そしてイヴはそれを見抜き、ギャリーが最近、仕事が軌道に乗り、忙しいことを幼いなりに分かっていたから、なるべく彼に話が行く前に終わらせたかった。
だってギャリーはイヴにどうしようもなく甘いから、きっと仕事を投げ出してもイヴのところに来るだろうことが分かっていたから。ギャリーとはそういう人なのだ、とイヴが理解したのは付き合いのまだ早い段階のころだ。

さてと、と玄関の鍵を閉め、イヴは2階の自室へと向かう。土曜の今日は午前中のうちに学校の宿題を終わらせて、午後はキャンバスに絵を描こうと思っていたのだ。
先日、ギャリーと一緒にメアリーの絵を大きなキャンバスに描き、その絵をイヴが貰い受けた。
現実世界のメアリーの絵画が果たして燃えてしまったのか、そもそも存在しないのかは、依然として分からないままだ。けれど、ずっと燃えてしまったままなのは可哀そうだからと自分たちで彼女を描くことを決めたのはこちらに戻って来て間もない頃だ。
その絵が完成したのが先日のことで、イブは絵画の中で微笑むメアリーのために自分、ギャリー、ウサギなど様々なものを描いては、彼女の横に並べた。―――あの世界で友達が欲しいと言い続けていたあの子が寂しくないように。
今日は何を描こうかな、と考えながら、イヴは物音一つしないリビングを通り抜ける。いつもなら、父がソファに座って、新聞を眺めているそこには、時計の音だけが大きく響いていた。やけに耳障りなその音に心臓の鼓動が少し速さを増した。
(ひとりの家って、こんなに不気味なんだ……)
怖さを殺すために服の胸元をギュッと握りしめる。そういえば、ひとりでこの家で過ごすのは今回が初めてだ、とイヴは今更ながら気付いた。それと同時に心臓は早鐘のように鳴りだす。ふと、リビングと戸続きになっているキッチンから、時折ぴちゃん…ぴちゃんという水が落ちる音がした。
途端、背筋がぞわぞわと粟立つ。イヴはこの感覚に覚えがあった。それは、あの奇妙な美術館に初めひとりで投げ出された時と同じ感覚だった。
でもあの時は途中からひとりではなかったから。彼が、いてくれたから。

(ギャリー……)

彼の名前を声に出して呼びそうになって、慌ててイヴは首を激しく横に振った。
だめだ。忙しい彼を呼ぶわけには。
唇を噛み締め、震えだしそうな足を強引に前に進める。
おかしいな、もう薔薇もないし、自分を傷つける芸術品(モノ)もここにはないのに。誰も居ないことがこんなにも怖いなんて。
転ぶように階段を駆け上がり、イヴは自室へと飛び込み、扉をきつく閉めた。
扉に身体を預けたまま、ずるずるとしゃがみ込み、イヴは小刻みに揺れる両手で自身を守るように抱きしめた。

「……ギャリー…」

こんなときに一番に助けを求めるのは両親ではなく、あの場所で命懸けでイヴを守ってくれた彼の名前で。優しくて頼れる彼はいつだってイヴのヒーローだった。
恐怖で震える自分を優しく抱きしめてくれ、「大丈夫、アタシがいるじゃない」と―――。
そこまで考えたら駄目だった。やがてイヴは膝に顔を埋めて、込み上げてくる恐怖から啜り泣きをはじめていた。

(怖いよぅ…ギャリー……)

どうか、孤独(ここ)から私を救って。



◇◆◇

はぁ。
…はぁ。
……はぁあ。

ギャリーはもう数えるのも面倒なくらい溜め息を吐きながら、シャーペンのノックを頻りにカチカチと鳴らしていた。そして、「うぅぅうー」という呻き声と共に、ちらっと見やるは自身の携帯電話。
今日は仕事初めからこの調子で、それにいい加減耐えられなくなったのは一緒に仕事をしているスタッフだった。
というのもギャリーの勤めるこの小さな服飾事務所はギャリーが大学卒業と共に大学仲間らと設立し、彼をメインデザイナーに頂く形で成り立っている。ギャリーは大学卒業までにいくつかの新人賞をとり、期待の新人として現在世間で注目を浴びている。
ちなみに彼のデザインする服はいずれも上層階級の清楚な少女から女性をターゲットにしたものなのだが、まぁ、今回それは割愛するとして。
つまりどういうことかというと、彼の仕事(デザイン)が出来なければ、他のスタッフも仕事にならないということだ。
数時間前からまっ白なスケッチブックの前で気も漫ろなギャリーの横で、滑らかな赤い生地に鋏を入れていた女性―クレアは眉間に皺を寄せて、彼を睨んだ。

「ギャリー、いい加減にして。全然、仕事になってないじゃない。クライアントの締切、来週末までなんでしょ」
「分かってるわ、……分かってるんだけど…」
「なに、またスランプなの?」
「そうじゃないんだけどぉ……」

そう言葉を濁しては、またちらりと傍らの携帯電話に目をやる。ピクリとクレアの眉が動いた。

「ギャリー……」
「あー…ごめんなさい…ただ、どうしてもねぇ……」

しおしおと謝るくせに一向に仕事の手は進まないギャリーを呆れ眼で見下ろし、クレアは今日はこの人使い物にならないわねと肩を下げた。
ここまで携帯電話を気にするってことは、どうせギャリーが猫可愛がりしているという件の少女がらみなのだろう。
そう思ったのはクレアだけではなかったようで、向かいで型紙を作っている男性スタッフ兼ギャリーの悪友のマットが「なんだよ、ギャリー」とニヤニヤした意地悪い笑みを浮かべ。

「お前、とうとう手ぇ出したのか?」
「アンタ馬鹿じゃないの!?イヴ、いくつだと思ってんのよ!?」
「年端もいかないってことしか知らねぇよ。お前、俺らに会わせねぇし。まぁ、いざって時は警察に知り合いがいるから任せろ」
「ホント馬鹿じゃないの!?警察に世話になる用なんてないわよ、アタシ!」
「数年後は分かんねぇだろ。魔が差したってこともあり得るしな」
「魔が差して手ぇ出すって、それアタシ最悪じゃない!」
「幼女に惹かれつつあるロリコンなのに、いまさらお前何言ってんの」
「まだ惹かれてないわよ!」

ぎゃんぎゃんとやり合う二人に、クレアはただでさえ仕事進まなくて頭痛いのにと、頭痛がする頭をおさえた。
わざわざ休日出勤しに来てるのに、こう仕事が進まないんじゃ、いっそ潔く帰った方がいい気がしてくる。っていうか、私は帰りたい、とクレアは内心で呟いた。


「で?」
「え?」
「今日の仕事の絶不調の理由は?その子が原因なんでしょ?」

ともかく、と未だマットと下らない応酬を続けているギャリーにクレアは尋ねた。これでギャリーが仕事するなり、…最悪帰るなりを選択することを願って。
急に水を向けられたギャリーはえぇと、と言い淀んだ後、もごもごと詳細を喋り出した。

「イヴがね、今日ひとりでお留守番してるんですって。それで、イヴのママさんに何かあったらよろしくって頼まれたのよ…」
「へぇ。それで、電話がかかってこないか、ちらちら携帯見てたのね」
「そう!そうなのよ!イヴがひとりで泣いてそうで、もうアタシ気が気じゃなくって……」
「そう。それは心配ね。だったら、こんなとこでぐだぐだ悩んでないで、とっとと仕事終わらすか、納品諦めるかしなさいよ」
「ちょっ!?それ、選択肢あるようで、ないようなものじゃ…!?」
「な・ん・の・た・め・に・みんなで連日休日出勤してると思ってるのかしらぁ?オーナーァ?」
「はい、すみませんでした」

後ろに般若を背負ったクレアに土下座する勢いでギャリーは謝罪。ぺこぺこと頭を下げ、顔を青ざめながら思ったのは、いつかの『女って怖いわぁ…』という言葉だった。



◇◆◇

とても宿題する気にも、絵を描く気にもなれなくて、イヴはベッドに寝転んだ。頭まですっぽりもぐりこみ、身体を小さく丸める。
ベッドの頭上には、10歳の誕生日にギャリーに貰った赤薔薇を抱えたウサギのぬいぐるみが置いてあり、イヴはそのぬいぐるみを胸にしっかりと抱き込む。
時計は相変わらずカチカチと規則正しい音で時を刻んでいるようだけれど、時間は停滞でもしているかのようになかなか流れていかない。
いつもはあっという間に過ぎる5分が今は一時間にも二時間にも感じられた。

(早く、早く夜にならないかな…)

たしか、両親はイヴが寝る前までには帰ってくると言っていた。裏を返せば、少なくとも日が明るいうちには帰ってこないということだ。
夜まであと何時間あるだろう、とイヴは気が遠くなる思いがした。
寝てしまえば、夜かな。そんなことを考えたけれど、眠気は一向に襲ってこない。
一分が60秒で一時間が3600秒で半日が……一体何秒数えたら、ひとりじゃなくなるの。
ぽろぽろと目から溢れだす涙が顔を伝ってシーツに沁みを作る。
ここに電話がなくてよかった。あったら、きっと心細さから、ギャリーに電話していた。
だめなのに、忙しいから迷惑かけちゃ、手のかからない良い子でいなくちゃいけないのに。

『かわいい!いい子ね、イヴ、大好きよ!』

耳の奥でギャリーの声がする。いつもだったら、一緒に抱き締めてくれるのに、今はその温かい腕はない。

「ギャリー…」

寒々しさにイヴの心は弱っていった。




◇◆◇

「よし、最後の一枚、完成よ!」

そう言うや否や、ギャリーは掛けていた椅子から慌ただしく立ちあがり、身支度を始める。
デザイン画を突き出されるようにして渡されたマットは眉を上げて、「おいおい、やっつけ仕事じゃないだろうな?」とバタバタと動き回るギャリーに訊いた。その言葉に対してのギャリーの反応は「はぁ!?」と肩を怒らすというもので。

「当たり前じゃない!これでもプライドくらいあるわよ。いつも完成品はその時の全力で挑んでる」
「―だな。悪い、軽率だった」
「それで、ギャリー。あの子のところに行くのよね?」

マットの横からデザイン画を見ていたクレアはもう戸口まで行って、今まさに出ようとしていたギャリーを一旦その場に引き留めた。ギャリーは振り向きざまに早口で用件だけ伝えた。

「ええ、悪いけど、問題が起きたら、携帯に電話してくれるかしら。あと、帰る時も連絡頂戴。連絡がなかったら、夜にまた来るわ」
「了解。んじゃ、ギャリーは気になって仕方なかったあの子のところにいってらっしゃい。夕飯は適当に食べるから、ギャリーも適当に食べてね」

クレアの言を噛み砕く間、ギャリーはパチパチと目を瞬き、それから意味を悟ってふっと微笑んだ。つまり、クレアは夕飯が終わるまで、イヴと一緒に過ごせと言っているのだ。なんとも小粋な心遣いだとギャリーは思わず笑ってしまった。

「ありがと。クレアもマットに奢ってもらうといいわ」
「あら、嬉しい。いいの?マット」
「ちょ、待て、お前の奢りじゃないのかよ」
「彼女の飯代くらい、彼氏が持ちなさいよ。情けないわね」

なんだか渋い顔をするマットを尻目に、ギャリーはじゃあねと職場を後にした。


ギャリーは車の行き交う大通りを足早に歩いていた。時刻は三時を回ったところだ。もう少し、早く片付くかと思ったけれど、思いの外時間がかかってしまった。
ギャリーの事務所からイヴの家まで徒歩で30分あまり。イヴたち家族は閑静な高級住宅街の一角に家を構えていて、そこは街の中心地からやや外れたとこに位置する。
なだらかな坂が数十分続く彼女の家まで行くのは、結構骨が折れたりするのだけど、イヴが待ってるとなれば、疲れなんてなんのその、である。
特に今日はイヴの両親が不在ということもあって、いつもより歩くスピードが速い。――まぁ、ママさんのあんな言葉聞けば、速くもなるけどね、とギャリーはやおら息を吐いた。

『明後日ねぇ、私たちが親戚の法事に行っている間、イヴのことお願いできないかしら?ギャリーさんもお忙しいと思うんだけど、あの子をひとりで家に残して行くのはちょっと心配で…。しっかりしている子だけど、脆いところもあるから…。
えぇ、えぇ、そうなのよね、甘えるの下手な子だし、なんだかひとりでお留守番って話をした時、あの子ちょっと泣きそうになっていたというか…。ギャリーさんに来ていただきましょうか?って訊いても、いいの、大丈夫の一点張りで。
お仕事が終わった後でもいいのよ、ちょっと覗いてくれるだけで。えぇ、あの子が一番懐いてるのってギャリーさんだから、ギャリーさんに会えば安心できると思うし…。えぇ、えぇ。お願いできます?あぁ、そうですか。有難うござます。それじゃ、明後日お願いしますね』

一昨日の夜、イヴの母からかかってきた電話。あれから、ずっと気掛かりだった。
イヴは人一倍、芯の強い子だけど、その分、甘え下手なところがある。いつか長い我慢の末にポッキリいってしまいそうで、ギャリーは気が気ではなかった。
自分には時々、甘えるような仕草をしてくれるけど、それも近くにいる時限定で、離れているとき――例えば今みたいな状況で、甘えられたことは皆無だった。
たとえ、心細くても、泣きそうでも、あの子は近くに誰かいないとひとりで我慢してしまう。
だから、なんとなくだけど、

「……泣いてるような気がするのよねー…」

ギャリーは乾いた笑いを漏らした。
恐らく自身の推測は70%くらいの確率で当たっていると思う。泣いてなくても、少なくとも心細くは思っているだろう。
イヴも自分もひとりでいることに未だ慣れないのだ。あの美術館での出来事の後遺症とでもいうのだろうか。
全く厄介なものばかり置いて行ってくれたわ、とギャリーは悪態をついた。


やがて、庭園が見事なお屋敷が目の前に現れる。ここに来る途中で買ったマカロンを右手に、ギャリーはやけにひっそりとしたその家の様子に目を顰めた。
イヴがいるはずなのに、まるで留守の家のように静まり返っているのだ。
辿り着いた呼び鈴の前で首を傾げながら、ベルを押す。家の中にベルが響き渡っているのが、外に居ても聞こえるのに、相変わらず家の中は閑散としたままだった。

「あれ、イヴ、いるはずよね…?」

怪訝な顔で玄関にある小窓を覗く。昼間だというのに家の中の廊下が薄暗いことにギャリーは嫌な予感が胸に広がった。
もう一度、ベルを押し、今度は「イヴー、いないのー?」と中に向けて呼び掛けてみる。も、結果は先程と同じ。
本格的に何かあったことを懸念しはじめたギャリーはコートの中から鈴付きの鍵を取り出した。実は前日にママさんに念のためと合鍵を預かって来ていたのだ。
合鍵を他人に渡すなんてと受け取りを拒否したが、ママさんの押しに負けてしまったけれど、預かっていて良かったかもしれないとギャリーはイヴの母に内心で2度目のお礼を言った。ちなみに1度目は鍵を預かる時に既に言っている。
ドアの中ほどにある鍵穴に鍵を指し、右に捻る。ガチャリ、と鍵は無事に開いた。
そうしてギャリーは鍵をまたコートのポケットに仕舞い、恐る恐るといった体で家の中に身体を滑らせた。

「……おじゃましまーす」

いつもより小さいその来訪を告げる声は生憎イヴの元までは届かなかったけれど。



◇◆◇

ベッドの中で時計を見ながらひたすら秒を数えていたイヴは、呼び鈴のベルの鳴る音にビクリと身体を震わせた。

(誰か…来た……?)

怖々と布団から顔を出し、自室のドアを振り返った。その時、もう一度ベルが鳴り、何事かくぐもった声が聞こえてきた。何を言っているかとか、誰の声だとかは分からなかったけれど、両親でないのは分かっていた。
まだ三時半を10分ほど過ぎたころで、両親の帰ってくる時刻には早過ぎたから。なにより、両親だったら呼び鈴なんて鳴らさない。

(郵便屋さん……?)

他に来ると行ったら、郵便配達の人しか思い浮かばなかった。だったら、出て行って荷物を受け取らなくちゃと思い、布団から出ようとした。今は見知らぬ誰かでもいいから、人の顔を見たかった。
しかし、布団から出る直前、ガチャリと玄関のドアを開け閉めする音がして、イヴは一瞬固まった。玄関は鍵を閉めたから、郵便配達の人は開けられないはず。なのに、なんで玄関のドアが開くの。
まっ白な頭でイヴは茫然としていたが、ぎしっという階段を上がる音がして、一気に血の気が引いた。
ガタガタと震える身体をベッドの中に隠して、イヴは息をひそめて、存在を消すよう努めた。
ウサギのぬいぐるみを胸の―心臓の上に抱えて、顔を壁の方に逸らした。ドク、ドクと脈打つ心臓がうるさかった。
刃物とか持ってたらどうしよう。私今薔薇ないから一回しかダメージ受けれない。ふっと漏れそうになる泣き声を唇を噛み締めることで殺した。
階段を上る音が近づいてくる。そして、その足音はイヴの部屋の前で止まった――。

(怖い。怖いよ。助けて、誰か…。)
(ギャリー!!)

コンコンというノック音でヒクリと竦み上がる自身の心臓。呼吸が止まった。けれどその直後、ドア越しに聞こえてきた声にイヴの心の箍はそれまでとは別の方向に外れる。

「イヴ?いないの?――あら、寝てる?」
「――――!!」

イヴはベッドから跳ね起きて、無我夢中でドアまで駆けた。今までの寂しさと直前の恐怖でイヴの顔は酷いことになっているだろうけれど、構わなかった。
彼だ。彼が来てくれた!
こじ開けるようにして開いたドアの先には、イヴが焦がれて焦がれて仕方なかったギャリーがいた。
いきなり勢いよく開いた目の前のドアにビクついた様子のギャリーの腰に抱きついて、イヴはわんわん泣いた。
泣いている途中、ギャリーがイヴを抱きしめながら、「どうしたの!?なんでそんなに泣いてるの!?」と目を白黒させていたが、イヴはただ泣きながらやっと得た温かい存在を離さないようにしっかりとしがみ付いたのだった。


◇◆◇

それからが大変だった。自室の前で大泣きしているイヴを抱え、「大丈夫だから」とギャリーは繰り返し、イヴの目尻にキスを贈った。
そうして泣きわめくイヴを何とか宥めることに成功したギャリーは台所でコーヒーとココアを作り、1階のリビングのテーブルに置き。家の中が怖いというイヴのためにリビングから目に着く照明を全て点け、少し季節的に早いが暖房も入れた。
それらのことをしている間もイヴはギャリーのコートの裾を掴み、ひよこのように彼の後ろをついて回った。
その後、ようやくリビングのソファに腰を落ち着かせたギャリーはしゃくりあげるイヴを膝に抱いて、暫くそのままでいた。ゆるゆると背中を撫でたり、戯れに頬をさすったり、目尻の涙の跡を拭ったりとギャリーがイヴに触れるたびに、イヴの呼吸は落ち着いていった。
イヴはというと、ギャリーの胸に身体を預け、丁度心臓の真上辺りに耳を押し付けていて。自分より幾分かゆっくりしたギャリーの鼓動にうっとりと目を細めた。

「落ち着いたかしら?」

やがてすんすんと鼻を鳴らすイヴにギャリーが尋ねる。イヴはこっくりと頷いた。するとギャリーがほっとしたように笑う。

「そう。よかった…。あんなに泣いてるイヴ、見たことなかったからびっくりしちゃったわ」
「ごめんなさい…」
「いいのよ。びっくりさせちゃったのよね?」

そう言ってイヴの頭を撫でるギャリーの声はいつもより僅かに低い。イヴは心地いいふわふわした気持ちですりすりと頭をギャリーの胸にすりつけた。
ギャリーの「イヴ、くすぐったいわ」という声を聞いても、気持ちよさに止めることが出来ない。まるで猫になったようだ。なんだか喉も鳴りそうなくらいに気持ちがいい。
イヴはぴとっとギャリーに張り付いて、ふと彼の名前を甘えたな声で呼んだ。

「ギャリー…」
「―なぁに?」
「…ギャリィー…」
「ふふふ、イヴったら今日はやけに甘えたさんね」

柔らかい声音で微笑んだギャリーはイヴの額に口づけ、「可愛い」と恍惚とした声で呟いた。
どうやらこんなに甘えてもギャリーに咎められないことを知ったイヴはさらに普段誰にも言わないような我儘を彼に告げた。

「今日、一緒に寝てほしいな……」

お願い、とでもいうようにイヴは上目づかいにギャリーを見つめる。それに一瞬瞠目したギャリーはすぐにやんわり微笑んで、イヴの頬を両手で包みこんだ。
包んだ頬はふっくらと柔く薔薇色に色づき、見上げるガーネットの瞳は水分を含んで潤んでいる。ゆらゆらと揺れる瞳が口ほどに物を言っていた。

曰く、ダメ?ダメなの?―――と。

(これを断れるやつがいたら、見てみたいわ…)

内心、苦笑いをしながら、ギャリーはイヴの額に自身の額をあわせ、その瞳を覗き込みながら、ふんわりと笑んだ。


「そうねぇ…ママさんに相談してみましょうか。今日、お泊りしてもいいですか?って」






END
(続かないよ)







Ibにハマった勢いのまま、書き散らしました。後悔はない<ドヤァ…
普通にチューとかギャリーさんしてますが、それでも私はギャリー+イヴと言い張る。
一応、彼に下心はないです。純粋に愛しい子(あくまで娘じゃなく、子供)を慰めてるだけなのです。
ぶっちゃけ、私の中のギャリイヴ観では、イヴが幼い時の方がベタベタしてます(笑)

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誰の目にも触れさせたくない、なんて(君に届け)

君に届けより風爽(…と言えるのか?)+α










それはあの衝撃の公開告白から、あまり日が経たない、ある昼休みのこと。

「なぁ、風早」
俺ずっと聞きたいと思ってたんだけどさぁ。

何人かで机を囲んで昼ご飯をとっていた時に、風早の横で焼きそばパンにかぶり付いていたジョーが、何気なしに風早に尋ねたことから始まったのである。


「ジョー?」
「なんだ?突然?」
ジョーの突然の切り出しに、その場にいた全員が手を止めてジョーを見た。風早も一旦箸を止めて、聞きたいこと?、と首を傾げる。
ジョーはそんな風早の様子に、そう!聞きたいこと!、と風早をビシリと指さして。
滅多に見られない真剣な顔をして(似合わないとかは禁句だ)、声高らかにこう言ったのだった。


「あのさ、風早は具体的に貞子のどこがよかったのさ?」


「………………は?」

「だから!貞子の好きになったところは具体的にドコ!」
俺、ぜんっぜん、分かんないんだよね!
突拍子もないジョーの話題にはもう随分慣れたと思っていたけれど、案外そうでもなかったようで。風早は箸を片手に暫し固まった。
その間にも、ジョーのマシンガントークは続く。

「だってさ!お前ら、考えてもみろよ!風早だぞ!もう超ーモテモテの!俺が知ってる中でも告白された回数、両手じゃ足んないね!彼女だって選び放題なはずなのに、選んだの、まさかの貞子だしさ!もう俺、何処に惚れたのか、気になって気になって夜も寝れねぇよ!」
「嘘つけお前、さっきの授業爆睡してたくせに、なにが夜も寝れねぇだよ」

さっきの授業の先生、超怒ってたぜ?そのうち、呼び出されんじゃないのか?
ジョーの発言にすかさず安藤(通称アンディー)が突っ込んで。それから安藤は、うーん、まぁ、確かに気にはなるけどな、とまだ石化が解けない風早をちらりと横目で垣間見た。

人当たりがよくて、明るくて。正義感が強くて、クラスの中心。しかも運動もできて、成績もそこまで悪くはない。
そんなモテる要素ばかり持った風早が、女子に人気があるのは、もはや周知の事実で。
けれどこれまで恋愛事に興味を示さなかったから、付き合うとかはなくて。そこへ来て、最近やっと付き合い始めたのが、貞子。
気にならない方がおかしい、な。安藤は独り、心でそうごちる。

「な、な、龍、風早になんか聞いてないのかー?」
と、ジョーは、今度は標的を、未だに固まっていて聞き出すにも聞き出せない風早から、龍にしたようであった。
この場でただ一人、関せずの態度を貫いていた龍はパンをくわえたまま、首を左右に振る。
どうやら、知らないらしい。いや、興味がないといった方が龍の場合は正しいか。
そんな龍に「えー!?」と声を上げたのは、言わずもがなジョーなワケで。
「龍でさえ知らないのかよー? 龍なんも聞かなかったのかよぉ??」
「興味ない」
龍は即答して、ズズ、とパックのコーヒーを啜った。なんとも龍らしい言葉に安藤が苦笑すると。
やっと石化が解けたらしい風早が「は、ぁああぁ!!????」と声を上げた。

「じょ、ジョー!?? お前、何いって…」
「あっ、風早帰ってきたのか! なぁなぁ、どういうとこー??」
「しょーた、おかえり」
「随分と長い旅だったなぁ」

各々から声を掛けられて、あ、うん、ただいま。ちょっと吃驚して、と風早が答える。そしてその顔が段々と真っ赤に染まっていって。ジョーと安藤は珍しいものでも見るかのようにその様を繁々と眺める。

やがて。
「なぁー、風早ぁー」
ジョーがまた自身の問いへの答えを催促し始めたのだった。
「どんなとこ?なぁ、どんなとこ?」
「あーもう、ジョーうっさい!」
真っ赤な顔で肩を怒らせて、風早が声を張り上げた。そして、どこでもいいだろ!、と拗ねた顔でそっぽを向く。そうすると不満げに口を尖らせたジョーが。

「えー、教えらんないの?」

「ちがう!教えたくないの!」

ジョーの問いに風早が荒々しく答える。
その内容にジョーと安藤はポカンとした顔をしてから。二人、はぁ?、と首を捻った。
「教えたくない?…ってなんで?」
普通、彼女のいいとことか、知ってもらいたいモンなんじゃないの?、とジョーが聞き。あー、もしかして言葉にしにくいとか?、と安藤が自分なりの答えを挙げる。
しかし風早はゆっくりと首を振り、そうじゃなくて、とまで言って、口籠ってしまった。
そんな風早に、そこまで言ったんなら言えよ!、とジョーと安藤が思うのは当然であろう。ともすれば。
「"そうじゃなくて"?」
「――――――――~~~~~~~」
「"そうじゃなくて"、何?」
「――~~~~俺だけ、知ってればいいんだよっ!!」



「それ誰かが知れば、そいつ、黒沼のこと好きになっちゃうだろっ!!」




恥ずかしいのか、顔を背け、そんなことを言い放った風早に、他の3人は。

「………………恋は盲目ってこういうのをいうんだろうな」
「…………あぁ。それも重症の域だな、これは…………」
「………しょーた………」

遠い目をして、それぞれポツリと呟くのだった。









誰の目にも触れさせたくない、

 (なんて不可能なことを考えている)


      だって君はすごく魅力的だから、さ。








(おわれ。)








提供:疾風迅雷






はっずかしい奴め……っ!!!!!!(叫)

「風早、おまい、マジでいい加減にしろ!」と書きながら何度思ったことか……(;-д-)
ちょ、誰か、あの調子ノリノリBOYの後頭部を思いっきり、叩いてきてください(笑)
むしろやのちんがそれやってくれればいいよ。椎名先生、お願いします。

そしてジョーとアンディーと龍。ほとんど初書きです。というかアンディー君の性格は完全に想像で書きました。
でも、こやつらの会話、書いててすごく楽しかったです。男子高校生の日常会話は書いてて楽しいですよね!
またいつか書きたいな。特にジョー。こいつの書きやすさは異常。
逆に龍は書きにくかったな。いや、爽子程じゃないけど。
爽子の書きにくさといったらないですね!そして多分その要因は私の心が真っ白で純粋ではないからですね!(←)
ふふふ、知ってるやい…(泣)

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I wanna protect you. (学園アリス)


学アリよりなつみかん(中等部設定)。


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傷の舐め合いがしたいんじゃない。



ただ、傍でアンタのことを守りたかった。




ウチのことを陰から守ってくれて


いつも傷ついているアンタのことを。















なんだか、いつもと違うと思った。

朝、遅刻ギリギリに登校してきた蜜柑は、いつものように斜に構えて独り自分の席に座る棗の様子を見て、首を傾げた。

棗の顔色、いつもより悪くないやろか…。

決して白くはないはずの棗の顔が、今日はなんだか白くて。
棗の隣に座る流架も口にはしないが、しきりに横目で棗の様子を窺っている。
けれど棗は普段通りの傍若無人な振舞いで流架やその他委員長のような鋭い観察眼を持つクラスメートを牽制している。
けれど、蜜柑にとってそんなこと知ったことではないのだ。

「なぁ、棗…」
鞄を自身の机に置いて、蜜柑はゆっくり棗に近づいて、声をかけた。
「あぁ?」
不機嫌そうな表情の中に気だるげな様子を隠して、棗は蜜柑を鬱陶しそうに見やる。それに少しムッと顔を歪めて、けれど蜜柑は「なぁ、アンタ――――――」と続けようとした。
その時。
「はい、みんなおはよう。HRはじめるよ~」
席についてね、と笑顔の鳴海が教室の戸を潜ってきて。そうするとみんな億劫そうに自身の席に着き出す。
「あ…」
タイミングを逃すとは正にこのこと。思わず声を漏らしてしまった蜜柑に、棗は怪訝そうな眼差しを向ける。
「おい」
「え、」
「席に着けだとよ」
クソ鳴海が困ってるぜ、と棗が顎でしゃくるその先には苦笑で蜜柑と棗を見つめる鳴海の姿が。
「―――――………」
仕方なく、本当に仕方なく、溜息と共に席に戻っていく蜜柑に棗が内心安堵の息を吐いていたこと蜜柑は知る由もなかった。







HRを終えて、さぁ棗と話すぞ、と意気込んで、後ろをバッと振り向いて。
蜜柑は目を剥いて叫んだ。
「アイツ、居らん!!」
なんで、だってたった今HR終えたことやで!?
おかしいやろ、瞬間移動!?

混乱の余り、髪を振り乱して叫び声を上げる蜜柑に教室から出ようとしていた鳴海がなんでもないように告げる。
「あっ、棗君なら、HR中に教室から出てったよ~」
笑顔で告げた内容にB組のほとんどの生徒が、止めろよ、お前曲がりなりにも担任だろ…、呆れと共に心で突っ込みを入れていたりするのだが、それはあまり話に関係ないので、割愛するとして。
とにもかくにも、棗の居場所に心当たりがあった蜜柑はあとを追おうと席を立った。

「アンタ、授業はどうするのよ」
と、それまで蜜柑の様子を焼きプリンを食べながら静観していた蛍がポツリと蜜柑に言葉を投げかける。
それに肩越しに振り返り、蜜柑は「えーと、、なんやったっけ…?じ、自主早退(?)ってやつや!」と笑顔で答えて、バタバタと教室から出ていく。
それを見送りながら、蛍は焼きプリンを口に運ぶ手を止めて。
「つまり――――サボりね」
ふぅっと溜息を漏らし、ま、程々にしときなさいよ、と心で蜜柑に忠告するのだった。








普段の棗なら北の森に居るはずなのだが、今日の棗は見るからに調子が悪そうであった。
ならば、素直に寮に帰ってるはず。
そう踏んで、蜜柑は寮への道を急いだ。

寮の階段を駆け足で駆け上がり、蜜柑はある一つの部屋までたどり着いた。
――――――――――――――――――Natsume Hyuga.
寮の中で一際大きいこの部屋は現在スペシャルである彼しか使っていない。
蜜柑も入ったことは数える程度しかなくて、しかも招からざるときにこうしてこの部屋の前で一人立つのはおそらく初めてのことで。
蜜柑は一つ深呼吸をして、そして覚悟を決めたように扉の前に握り拳を持ってきて、ノックをした。
それはコンコン、と存外軽やかな音を立てて蜜柑の来訪を告げてくれる。
しかしそれに対する中からの返答はナシ。
蜜柑はもう一度、今度は強めにノックをした。
しーん、と静まり返るこの場の空気に、蜜柑はもしかして居ないんやろか?、と中の様子を窺う。
だが部屋の中からは確かに不規則なゴソリ、という衣擦れの音がしていて。
えーと、つまり……。

「居留守か、おんどりあぁぁぁ!!!!!!」
ドアノブを持って、力の限りドアを押すとドアは案外簡単に開いた。
それに思わず拍子抜けをして呆けてしまう蜜柑に、ベッドの上の棗は凄みをきかせた眼でもって、蜜柑を睨む。
「不法侵入か、お前は」
「それは、アンタが返事せんから悪いんやろ!!」
そう返してずかずかと棗に近づき、蜜柑はベッドの上に寝転ぶ、彼を眺め見た。

……………やっぱり、顔色悪い。脂汗も出てるし……。

近くで見て、それを正確に感じ取った蜜柑は顔を歪めた。
それに棗は小さく舌打ちをする。
「お前、帰れ」
吐き捨てるように棗が言うと、蜜柑はさらに顔を歪めて。
「…アホ。帰れるわけないやろ…っ」
視線を落として、泣き出しそうに瞳を揺らした。
「アンタが独りで抱え込むのを黙って見過ごすなんてウチには出来ひん…っ」
蜜柑は気付いていた。彼の体調の悪さが自然なものではないと。
きっとまた彼は闇の中で何かをして、何かをされてきたのだ。
それを分かっていながら、何も出来ない自分を歯がゆく思う。
でも、せめて。
「――――――――傍にいさせてぇな」
彼を支えていくくらい自分にもさせてほしい。
「今日はウチがアンタの面倒見るからっ!!何でも言ってええんやで!!」
棗は少し虚を突かれたように、瞳を揺らし、やがて溜息を吐いた。
「好きにしろ」
「フンッ!好きにさせてもらうわっ!!」
鼻息荒く、そう言い切った蜜柑は、とりあえず今の現状で出来ることを全てやったのち、顔色の悪い棗のために栄養ドリンクとか、薬とか、簡単に食べられるような食材をセントラルタウンに買いに行ったのだった。










セントラルタウンで看病道具セットを買ってきた蜜柑は玉子粥と喉を通しやすいスープを作って、棗にふるまった。
それを棗は不味い、とか文句を言いながらもすべて平らげ、今は再びベッドに横になっていた。
「なぁ、棗」
聞いてもええ?
ふいに棗の食べた食器とかを片付け終わって棗のベッドの脇にある椅子に腰を下ろした蜜柑が視線を揺らしながら、怖ず怖ずとそう言った。
「…?なんだよ?」
視線だけを蜜柑に合わせて、棗はやけに深刻な顔をする蜜柑にそう返す。
すると蜜柑は、迷ったように視線を彷徨わせた後、意を決したようにそれを告げた。
「その怪我とか体調悪いの………、ウチの…ウチのせい、やろ…っ?」
棗は一瞬固まって、そして身体を起こして蜜柑の方へ向けると、今にも泣きそうな蜜柑と目が合った。今にも泣きそうな表情をしているのに、その眼はやけに真っ直ぐで、曇りひとつない、そんなもので。
あぁ、今のコイツに言い繕った嘘は通用しない。
そう悟った棗はまた体をベッドに身体を横たえて、目を閉じた。

「お前のせいじゃない」
俺が勝手にやったことだ。だから気にするな。

そう告げると、蜜柑は表情を硬くして、首を大きく左右に振る。
「ちゃぅ…っ!ウチのせいや…っ!やって、最近…ウチに対する拘束が弱まった……」
あの初等部校長が最近接触してこなくなった。それと同時期に体調を壊した棗。
関係性を疑わない方がおかしい。
「ウチの代わりにアンタが……っ!!!」

「―――――――みかん」

ふいに自分の名を呼ばれて、それまで取り乱していた蜜柑はゆっくり顔をあげた。そこには真剣な顔で自分を見る棗がいて。

「さっきも言ったはずだ。“お前のせいじゃない。俺が勝手にやったことだ。だから気にするな。”」
噛み砕くようにその言葉を繰り返した棗に、蜜柑はついに泣きだした。

ちゃぅ。泣きたいんはウチやない。それなのに涙が止まらへん……っ。
あとからあとから頬を伝う涙は蜜柑のスカートの裾を少しずつ濡らしていく。
けれど止めることのできなくて、蜜柑は眼を乱暴に擦って、止まれ止まれ止まれ、と自己暗示をかける。
そうしていたから気づくのに遅れた。

涙で歪む視界に棗の両腕が映って、え、と思ったその数秒後には蜜柑は棗の腕の中にいた。
な、棗……?
蜜柑の背中に腕を回し、自分をしっかりと抱きしめる棗の腕の強さに蜜柑は少しの安心感を覚える。
あぁ、あったかいなぁ。
そんなことを思って、棗の腕の中で泣き笑いを零して。
やがて蜜柑も棗の背中に腕を回したのだった。





どうか傍に居させて。

アンタの少しの変化も見逃さないような、そんな近い距離に、ウチを置いておいてください。


守るから、ウチも守られるだけやなくて。

アンタを守るから。


やってウチはアンタのパートナーなんやから。







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はい、超長い小説にお付き合い頂き、ありがとうございました(*´Д`*)。
久しぶりに書きました、なつみかん。

えーと実は私、数年前まで学アリオンリーPCサイトにて二次小説を書いてました(汗)。
「空のはて」っていう、まぁ駄文サイトだったのですが…。
て、知ってる人いるのか…!?

うん、まぁ、もしその時に私が書いてた小説を知ってる人がいたら、今の文章と比較してみても楽しいかも。
成長、してるとは思いますので(ていうかしてないと困る汗)。



あとちょっと学アリについて語りたいのですが、あのB組で確固たる地位にいる棗と対等に接することができるのは恐らく蜜柑だけだろうなぁ…、と。
流架とかはちょっと違う気がする。棗にとって大切な人って観点では同じだけど。
蛍はそういうことは眼中にないので、もしかしたらある意味棗に恐れられているかもだけど、対等とかではないんですよね。
だから、棗のこと心配して、なおかつそれを行動で示すことができるのは蜜柑だけだろうなぁ、とちょっと思ったのです。
蜜柑は棗のパートナーで、恐らく人生のパートナーにもなってく人ですから^^

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きみの好きなところ[後篇] (君に届け)

風爽 つづき。

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花壇の草むしりを終えて、爽子はじょうろ片手に花壇の花や薬草に水をあげる。
水をあげると花や薬草が自分に向かって、微笑んでくれるみたいに水が滴って。
それが爽子はすごく好きだった。
思わずこちらまで微笑みながら、爽子は水を花壇に振り撒いた。
と、その時、上機嫌で花に水をあげていた爽子の頭上から声がかかった。

「水やり、終わりそう?」
驚いて、パッと顔をあげるとそこにいたのは。

「か、ぜはやくん…」

何故ここに、と繋げようとすると、風早はそれをいち早く察して、それを遮る形で爽子の疑問に答える。

「ちょっと用事があって、近く通り掛かったら、黒沼が花壇に水撒いてたから」

声かけたんだ、と風早は笑って言った。
それを見て、よかった、今度は笑ってくれた、と爽子が安堵の息を吐く。
すると風早は何?、と小首を傾げて。
それに慌てて首を振ると、爽子も笑って一旦水を撒く手を休めた。

「あ、邪魔してゴメンっ!」
「いいの。…話したかったから、風早くんと」

風早が爽子の水やりの手を止めてしまったことを慌てて謝ると、爽子は焦ったように首をふるるっと左右に振ったあと、目を伏せ頬を少し赤くする。

そう、ずっと話したかった。
なのに久しぶりで……言葉が出てこない。

目を伏せたまま、顔を赤らめ、そんなことを言う爽子につられて、風早も頬を染めた。
そして。

「…………うん、俺もずっと、話したかった」

首の後ろを掌で押さえ、視線を爽子から逸らしながら、風早は小さくそう漏らした。
その言葉を聞いて、爽子は下ろしていた視線をパッと風早に合わせる。
そして目に入ったのは。

そう。
神様みたいな風早くんがふいに見せる、こんな表情に。
私は惹かれたのだ。


そんなことを思ってしまえば、爽子の頬は赤くなる一方で、それを受けて風早の頬も同じように赤くなる。
二人して、ふしゅー、と蒸気を頭の上から発しながらも、視線は未だ交わらない。
痛いくらいの沈黙と空気に二人、耐え切れなくなったころ。

「おー?浮かれ早とちっ太君とその嫁じゃねぇか。こんな時間まで何、ときめきメモリあってんだよ」

そんな空気をぶち壊した奴がいた。

「…ピンっ!」
真っ赤な顔で声のした方を風早が向くと――――――――明らかに小馬鹿にしている顔で自分を見ているピンと目があった。
途端に薄れるさっきまでの顔のほてりと高揚感。

「―――~~~かえれ!マジで帰れ!」
「はー!?お前こそ帰れ!」
そんな抵レベルな会話を、顔を近付けてする風早とピン。
(ちなみに爽子は完全に置いてけぼりである)

「だいたい、なんでピンがここにいんだよ!それから俺は、まだとちってない!!」
「俺を夕日が呼んでたんだよ(意味不明)。つーかお前、自分で"まだとちってない"とか言っちまうから器ちっちぇんだよ!」

俺様を見習やがれ、と胸を張って声高らかにそう言い切るピン。
そんなピンに本気でここから消えてほしくなった風早である。
好きな娘の前で器ちっさいと言い切られたら、それも仕方ないことなのだが。

「あーもぅ、行こう、黒沼!!」
ピンの言動に耐え切れなくなった風早は、二人の間でおろおろしていた爽子の手を引いて、そこから逃げるように歩き出した。
そんな二人に後ろからピンの声が追いかけてくる。

「お!一緒に帰んのか!これからアハハウフフ言いながら青臭い青春を謳歌するのか!」

黒沼、その青臭いガキをしっかり守るんだぞ!と最後までゴーイングマイウェイを貫き通したピンの高笑いに背中押される感じで二人は気がつけば、昇降口まで来ていたのだった。




「っっごめん!!勝手に手、引いてきちゃったけど、まだ水やり終わってないんだよね…?」

もどろっか、と再度爽子の手を引いて花壇に戻ろうとする風早に、爽子の「まままま待ってっ!!!」という静止の声が声が掛かる。

「だ、大丈夫だよっ!一応もう終わってるから……っ!!」
「あ、そっか…」
「う、うんっ…」

そんな会話をしながら、じょうろをもとあった場所に戻し、改めて向き合う二人。
そうすれば自ずとあの空気に逆戻りしていて。
二人とも顔を赤らめて、視線は宙を彷徨う。
それでも―――――――お互い握られた手だけは、どうしても離すことができなくて。

このまま、お別れなんて……………やだな。
だってせっかく、久しぶりにこうして話せたんだもの。

俯いて、握られた互いの手ををじっと見つめたまま、爽子はグルグルと考える。纏まらない思考。赤くなるばかりの顔はひどく恥かしくて。

でも、それでも、行き着いてしまった思考の終着点は。


やっぱり、私は――――――――――――。


「「あの、(ね/さ)」」


「「きょ、今日一緒に帰らない!?」」



やっと交わった視線。
二人重なった声、言葉。
言いたかったこと、思ったことは二人同じで。

それに呆れたように二人、笑った後。


「…帰ろっか」

「うん…」

 
夕焼けのなか、伸びる二つの影法師。





 
そう、好きになったのは。

私を好きになってくれたあなた。 




おしまい。


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なんだか、「えぇ!?こんな終わり方かよ!?」という声が聞こえてきそうなラストだな(汗)
えー、改めて、君の好きなところ 1・2読んで下さってありがとうございました。
移転前に書いた小説があまりにも気に入らなくて、一部書き直しました。
まだ、、、満足いくものに仕上がったと思う。

風爽小説といえるか、よく分からない出来ですが(やけにピン目立ってるし)、少しでも楽しんで頂けたなら、私は万々歳でございます。
 

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きみの好きなところ[前篇] (君に届け)

君に届けより、風爽+α

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神様みたいな人だと思った。


その存在だけで人を引き付けて、離さない、そんな人。

でも私が好きになったのは、そんな"神様みたいな"人じゃなくて、ただの"照れ屋で焼きもち焼き"な男の子だったの。










帰りのHR。
隣の席の師匠が私に沢山話し掛けて、荒井先生がいつものように大きな声で必要事項を繰り返している。
少し離れた場所のちづちゃんとあやねちゃんはそんな荒井先生を見ながら、何か話してて(微妙に呆れてるように見えるけど、気のせいだよね)。
前の席のともちゃんは、なんだか可笑しそうに笑ってる。
そんな中に私がいるなんて、なんて幸せなんだろう。
だって、ずっとずっと前から憧れ続けた光景が目の前にある。
私が近くにいても嫌がらずに誰かが笑顔を見せてくれる。

そう、ずっと憧れてた。こんな状況に。
なのに。
どうして私は、それだけじゃ、もの足りなく感じてしまうんだろう。

いつからだろう。
私、前よりずっとずっと欲張りになった。
誰か一人でも自分の傍にいてくれたなら、それだけで泣くくらい嬉しかったのに。
今は……………風早くんがいない、それだけで物足りなくなってしまうの。
あぁ、本当に私、いつから―――――――――――。


「貞子ちゃん?」
「ふぁい!??」

思考の海にどっぷり浸かっていた私を隣の師匠が呼んだ。
あぁ、私、ずっと師匠が話し掛けてくれてたのに、なんて失礼なこと…………っ!
そう思い、あわわわわ、と慌てふためいていると、教壇に立つ荒井先生が「おら、そこ!俺様の話を聞きやがれ!」と師匠と私に指を指して注意した。
は…っ!大変、HRの最中でした…っ!なのに私ったら…!
心の内で何度も反省してから、改めて荒井先生の話に耳を傾ける。

「いいかー、お前らー、最近危ないらしいから、一人で帰るなよ、特に女子っ!」
誰か男、ひっつかまえて一緒に帰れっ!、と荒井先生はそう言い(なんて親切な人なんだろう…!)、解散っ!とHRを閉めた。
わらわらと各々帰り支度を終えた人から教室を出ていく。
「あちこちで一緒に帰ろー」と声を掛け合っている人が沢山いて、いつの間にか2・3人のグループが出来ていた。

「風早ー、帰るべー」
と、城之内くんや安藤くんが風早君の席の周りに集まっていくのが見えた。
風早君の姿を見止めた瞬間、ギシリと身体が固まり、動かなくなり。
ちょうど顔を上げた風早くんと目が、あった。
途端に表情が強張り、笑顔を作ることさえできなくなる。
風早くんはそんな私に気分を悪くしたのか、無表情でこちらをじっと見ていた。
そのまま数秒見つめ合うしかなくなる私と風早くんを止めさせたのは城之内くんで。

「風早~、な~に貞子と見つめ合ってんだよっ!早くいこーぜ!」

そう言って、風早くんの背中を押して、教室を出ていってしまう。
その後に安藤くんたちも続いて、教室から大半の男子がいなくなったのだった。
(きききき緊張した…っ!)
ずんどこ音を立てる心臓を深呼吸で押さえ付けて、風早くんたちが出ていった教室のドアをじっと見つめた。

やっぱり……少し話したかった、な…。
あっ、でも風早くん、ちょっといつもと違ったなぁ…。
下心いっぱいの私の視線に呆れて、笑ってくれなかったのかな。
…………………。
……………………っつ。
いっ…いつか謝れたらな…っ。

つい気持ちのままに「ごめんなさい、ごめんなさい」と教室の戸に向けてペコペコ謝ってしまった私に、あやねちゃんとちづちゃんが「何やってんの爽子…」と呆れながらも近寄ってきてくれて。

「さーわ!帰るぞっ!」
満面の笑みでちづちゃんが私を促し、今日はラーメンだーっ!、とすごく嬉しそうに笑ってる。
「ちづ、また行くんだ…。いー加減にしとかないと太るよー。ま、いってらっしゃい」
それに呆れたように笑うあやねちゃん。
「何いってんの、やのちん。やのちんと爽子も一緒に行くんだよ?」
「…はぁ!?太るからヤダよ!!一人で行ってきなよ!」
「えー、寂しいこと言わないでよ、やのちーん」
「あ…あの、私…今日は花壇の水やりとか草むしりとかあるから、ラーメンは…」
私の名前まで入れてくれて、すごくすごくうれしかったけれど、今日は花壇の整備しようって前から決めていたのだ。
私の言葉を聞いて、あやねちゃんとちづちゃんは少し目を見開き(気を…悪くしたかな…?)、じゃぁあたしらも手伝ってこうか?、と言ってくれた。

あぁ、本当になんて優しい人たちなんだろうと改めて思った。
でも私に付き合ったら、ラーメン食べるのが遅くなるから……。

「んーん、大丈夫。二人でラーメン食べてきてください」
でもいつかまた誘ってくれたら嬉しいなぁ、と思い上がって考えてしまうと、ちづちゃんは「んじゃ、また行こうね!」と笑って言ってくれる。

あぁ、やっぱり二人とも大好きだなぁ。
大好きだと思える人がいるってなんて幸せなことなんだろう。

しみじみとそう思って、なんだか涙が出そうになったけれど、何とかこらえて「うんっ!」と私は返事をしたのだった。


それからあやねちゃん、ちづちゃんとは昇降口で別れて、私はひとり花壇へと向かった。


つづく。

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長っ!

えーと初めて君届小説書いたけど、爽子のキャラがすごい難しかった。

に…っ似てなかったらごめんなさ…っ!

ししししかも、風早でてるところが少なすぎるという……っ!
あれ、おかしいな。これ、一応風爽小説なのに

前後篇なので、次で最後です(*・ω・)ノ

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Posted by 春乃 綺 on  | 0 comments  0 trackback
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